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その当時の新聞に詳しく書かれたところによると


 
引き続いて遠藤誠の、
 
画像:帝銀事件と平沢貞通氏表紙
 
この本の話。これまでに、
 
・軽い詐欺事件みたいの
・ナゾの名刺事件
・真犯人:諏訪中佐
・GHQの捜査中止命令
・調書の拇印が偽造
 
の5点について、大槻ケンヂがいかにして遠藤に騙されたかを検証してきましたね。
 
で、残る項目ですが、その中で、平沢がモンタージュ写真の顔と似ているかとか、面通しで何人が「違う」と言ったとか、若人アキラが郷ひろみに見えるかといった話はまあいいでしょう。言うまでもなく人間の記憶なんて曖昧なもので、遠藤にしてもセーチョーにしても、「違う」と言ったひとりひとりの証言を細かく挙げて、
 
「わたし、アラン・ドロンに似てるとか、ロバート・レッドフォードに似てるとか言われるんですが、どうでしょう。似てますかねえ?」
 
なんていうのを何ページにもわたって書き連ねるのだが、おれは全部読み飛ばしててだからここに書きようもないのだ。
 
それ以外もひとつを除いてどうでもいいよな。てわけで、後は、
 
・五聖閣の占い
 
だ。これを語ってオーケンがどう遠藤に騙されたかの話を終えることにします。
 
結論から言うと話の出どころは、成智英雄でも甲斐文助でもなかった。森川哲郎というやつでした。
 
モリカワテツロー? 誰だそれ? そんな名前、今までこのブログに出てきてないじゃないかと言われても困る。誤解してるかもしれないが、おれはついこのあいだまで、帝銀事件に詳しいわけでもなんでもなかったのだから。2月にこれを始めた時点ではセーチョーの『小説』ですら実は最初は図書館で借りてきたのを半分も読んでなかったくらいで、だから初めの10回くらいは間違ったことをいろいろ書いて後から訂正したり、途中から面倒になって訂正入れるのやめたりしている。
 
というくらいのもんなんだから。で、これからガンガン書いてやるぞーっと思ってたところにコロナのせいで図書館が閉鎖されてしまった。
 
サア困った。どうしよう。だからと言ってインターネットは絶対見ないと決めており、これを変えるつもりはない。
 
断じてだ。だから占いの話の出どころが今までわからずいたのだが、ようやく借りた遠藤の本を読んでみるに、
 
画像:帝銀事件と平沢貞通氏98-99ページ
 
こう書いてあるだけだった。『詳しく書く』と書いているけど全然詳しくない。
 
オーケンが、
 
   *
 
大槻「しかし、こんなことがあっていいんですか?」
 
アフェリエイト:のほほん人間革命
 
なんて偉そうに言うからには、さぞかし物凄いことが書いてあるのに違いないと期待したのに何もない。新たな情報なんかほとんどないやんけ。
 
つまらん! これでは、てんで話がつまらん! これで終わってしまったらおれという人間がつまらないやつと思われてしまう!
 
そういうこともちっとは考えて書けと言うんだクサレ弁護士野郎が。しょうがないからここにある森川哲郎とかいうやつの『獄中一万日』という、
 
画像:獄中一万日の写真
 
これが図書館にあったので借り出してみた。で、記述を探してみるに、
 
画像:獄中一万日より当該の記述
 
こうあった。こうあったけど、なんだこりゃあ? これだけしか書いてない! やっぱり何も変わらんやないけ!
 
うーん……溝呂木なんとかの『未解決事件の戦後史』には《諸説あり》と書いてあるから諸説あるんだろう、さぞかしいろいろおもしろい話があるに違いないと思ってたんだが、ちゃうやん。《一説には》なんじゃん。ただこれだけのこの一説以外になんにもないんじゃん。なんにもないからこいつにしても遠藤にしても、これしか言いようがないんじゃん。
 
だが、なんだ? 『それを詳細に報道した新聞もある。』とも書いてありやがるな。それを詳細に報道した新聞もあるという書き方だとそれを詳細に報道した新聞もあるように読めるが、それを詳細に報道した新聞もあるように読めるというだけだ。具体的なものがない。それを詳細に報道した新聞もあるのであれば、詳細を、ここに写して書けばよかろう。
 
なぜそれをやらんのだ。本を売る気があるのかこいつは。その新聞て、〈東スポ〉か、〈夕刊フジ〉なんじゃねえのか? いやその頃はなかったろうけど、《カストリ新聞》などと呼ばれる類のもんがいくらでもあった時代だろう。
 
だからそういうもんじゃないのか? カストリだからカストリと書けず、記事を写して書くことができず、『それを詳細に報道した新聞もある。』とだけしか書くことができない。そうだろ。あんまり変な新聞一流のスッパ抜きでやられても困るというもんだ。
 
そうだろう。考えてみれば、平沢がゲロッたというニュースが飛べば占い師なんてやつらの中には、
 
「居木井警部はワタシの客だ。礼状を書いてくれた」
 
とか騙(かた)るのが出てきて当然。おれもおれの『クラップ・ゲーム・フェノミナン』にそんなインチキ予言者を登場させているけれど、
 
クラップ・ゲーム・フェノミナン [電子書籍版]
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コート・イン・ジ・アクト試し読み版 [電子書籍版]
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とにかく、《名刺の裏に「名鑑を感謝す」と書いた》と言うが、そんなもん、名刺屋に頼んで適当に作り、自分でそう書きゃいいだけじゃないか。そしてそいつをカストリが知れば、『独占スクープ』として書くのも当然。
 
そういう商売じゃないか。たぶん、どうやらそれこそが、この話の真相じゃないかね。
 
そうだろう。オーケンも『のほほん人間革命』で占い師の取材もしているんだから、そこに頭を回せよって話だ。
 
またまたおれの小説の話になって申し訳ないが、《名刺の裏に一筆》てのは下のこれに出している。けど、
 
通り魔が町にやってくる [電子書籍版]
https://books.rakuten.co.jp/rk/6ad2225339d733c7b88f209141e0fd0d/?l-id=search-c-item-img-02
 
そんなもん、ちゃんと調べてみないことには本物かどうかわからない。居木井警部に聞いて「そんなやつ知らん」と言っても、『それでもボクは』の「まさか起訴すると思わなかった」の手口で《警部は嘘をついている》とされてしまったら――つまり、スキャンして見せた遠藤の本の、
 
《ところが、昭和二十五年一月二十三日、第一審の東京地裁でその居木井が証人台に立ったとき彼はそのことを一言もしゃべらなかった。》
 
ってのはひとめでそれとわかるもんだが、オーケンには真実を見抜けないから遠藤誠を信じ続けて「しかし、こんなことがあっていいんですか?」と偉そうな顔で言い続ける。
 
作品名:端数報告 作家名:島田信之