小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

端数報告

INDEX|56ページ/78ページ|

次のページ前のページ
 

明後日の方を捜してろ


 
おれが『ウルトラセブン』の中でいちばん好きなエピソードは第23話『明日を捜せ』。最終回や『狙われた街』と違ってほとんど語られることがない(と言うか、この話を語るやつなんて世界でおれひとりかもしれない)が、子供の頃に再放送で繰り返し見るたびこれがお気に入りだった。
 
アフェリエイト:ウルトラセブン(サウンドトラックCD)
 
主人公はダンではなくてキリヤマ隊長。道でトラックに轢かれそうになってる男を救うと、占い師だった。水晶玉を覗いて言うには、
 
「マルサン倉庫が爆発します。空飛ぶ円盤がフジミガ原に降ります。ワタシを殺そうとしたやつらだ。これは宇宙人の侵略なんだ……」
 
「デタラメ言うと承知せんぞ!」
 
とフルハシ隊員(毒蝮三太夫)。しかし隊長は男を信じ、御託宣の場の捜索を命じる。念には念を入れるのだ。マルサン倉庫の地下は地球防衛軍の秘密基地となっており、超兵器・惑星間長距離ミサイルの開発が行われている(って、つまりR1号?)。宇宙人に指一本触れさせるわけにはいかん!
 
……が、結果は異状なし。人と多大な費用をかけた大捜索は徒労に終わる。長官はキリヤマ隊長に、
 
「まったくキミらしくないぞ。科学的裏付けが為されておらん!」
 
と叱責の言葉を投げつける。占い師に「今日のところは帰れ」と言うと占い師は、
 
「隊長さん。あたしゃ宇宙人に狙われてんですよ。それを帰れって……信じてください。倉庫は必ず爆発します。円盤は必ず来るんですよ。今日がダメなら明日。そうだ。明日を捜しゃいいんですよ!」
 
と叫んだ。しかしどうすることもできず、彼を返すと途端に失踪してしまう。
 
占い師はどこに行ったのか。キリヤマ隊長は長官に休暇願を提出した。
 
「一日だけ休暇をください。あの男を信じたついでに、あの男が言っていた明日を捜してみます」
 
という……ああカッコいい。ダンはこの話の前半、別の任務で基地を留守にしていたのだが、戻ってきて話を聞き知り、隊長の後を追いかけるのだ。帝銀事件で八兵衛が、居木井警部の名刺班に後から加わったように。
 
――と、さて、倉庫の地下がひとつの星を破壊するほどの秘密兵器の開発基地になっていたり、ナントカ原に宇宙人とかやって来たり、主人公が一日だけの休みを使って消えた男を捜したりする小説でおもしろいのが何かないかとお探しの方がありましたら、おれが書いた次のものなどいかがでしょうか。リンクはこちら。
 
墨須夫妻 [電子書籍版]
https://books.rakuten.co.jp/rk/ed87e24bdcf934bfa0624d3f4e344d99/?l-id=item-c-seriesitem
 
シリーズ全話の無料試し読みはこちら
 
コート・イン・ジ・アクト試し読み版 [電子書籍版]
https://books.rakuten.co.jp/rk/ac5c59bc89d43d5a8da74dfe1651f208/?l-id=search-c-item-img-07
 
と、ここまでが宣伝として、帝銀事件の話である。この事件をネタにして小説を書いてみたいと考えてるとおれは前に書きましたけど、どうだろう。おれが書くなら『ウルトラセブン』の『明日を捜せ』でいくのはどうかな。
 
   *
 
警視庁にひとりの男が、「帝銀事件の情報がある」と言ってやってきた。居木井警部が応対すると、男は自分は五聖閣なる占い館の易者なのだと警部に言う。
 
「どうぞお引き取りください」
 
「待ってください! その前に、あたしの話を聞いてください。あたしの占いで、犯人は画家と出てるんです」
 
「ガカ?」
 
「はい。絵描きです。この事件はひとりの画家が、カネ目当てにやったことだと占いに出たんです。早く捕まえないと大変なことに……」
 
「ふうん」
 
「警部さん。本当なんです。その絵描きを捕まえないと、原爆戦争が起きるんですよ」
 
「ハン?」
 
と居木井。五聖閣の男の話はこうだった。今、ソ連では原爆の開発が進められている。おそらく、来年にも完成するだろう。そしてソ連ではスターリンが、中国では毛沢東が、帝銀事件GHQ実験説の噂を聞いて「本当なのか」と、日本にスパイを送って調べさせている。
 
「どうしてあんたにそんなことがわかるんだ」
 
「占いにそう出てるんですよ!」
 
スターリンと毛沢東が、噂を信じてしまったときが最後だ。そして日本国内でも、国民みんなが噂を信じたときが最後だ。共産化の止めようがなくなり、アメリカが言う〈防壁〉の用を為さなくなってしまう。
 
なのに朝鮮半島では、南朝鮮がいま〈大韓民国〉として独立しようとしている。共産主義の防壁に日本がならない状況で、そんなことをしたらどうなる?
 
金日成は間違いなく、ソ連と中国の支援を受けて38度線を越えるだろう。南朝鮮はまたたくうちに、T34戦車の津波に呑まれるだろう。そうなったとき、アメリカのトルーマンはどうするか。
 
原爆を使う。それしかない。他の選択がなくなるのだ。日本を〈防壁〉にできないのなら……何十というピカドンが半島各地で炸裂する。だがそのときにソ連でも、核を続々と生産している。
 
なら、スターリンはどうするか。決まっている。落とすのだ。日本にある米軍の基地という基地めがけて、爆撃機の編隊と、護衛戦闘機の群れを送って寄越して来、迎え討つ米軍との戦闘に日本人もみな駆り出されることになる。そして先の戦争を遙かに超える数の死者が……。
 
「ふうん。だから、なんであんたにそんなことがわかるんだ」
 
「ですから占いにそう出たんですよ。止める方法はひとつだけです。画家を捕まえ、カネ目当てにやったことだと明らかにする。一日も早く! 猶予はあと何ヶ月もありません!」
 
「ははあ……おい、例の名刺を持ってきてくれ。〈要注意〉の11枚だけでいい」
 
「警部。こいつを信じるんですか?」
 
「そういうわけじゃないが……」
 
そういうわけじゃないのだが、しかし当たるも八卦じゃないか。それに、なんだか気になる話だ。
 
今は5月。事件発生から4ヶ月だ。中東ではついこの前にイスラエルとかいう国が、建国したその日にそれを認めないアラブ諸国に攻撃されて戦争になった……とかいうのだが、何が何やら。
 
サッパリわからないけれど、朝鮮で韓国とやらが建国すれば、同じことになるのじゃないか。日本が〈防壁〉にならないのならすぐに潰されてしまう――。
 
というのはありそうな話に思える。帝銀事件を解決できねば日本も戦場になってしまう?
 
それも原爆戦争の? まさか、と思うが来月に、松井名刺の交換相手をすべて訪ねる旅をすることになっている。その結果を今ここで、占ってみても悪くあるまい。
 
そう思った。居木井は特に要注意としている名刺を並べて男に言った。
 
「なあ易者さん。この中に、あんたがホシだと言うのはいるかね」
 
「はい」と男。「あります。あたしの霊感が、『こいつだ』と言っている……」
 
   *
 
作品名:端数報告 作家名:島田信之