小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

端数報告

INDEX|53ページ/78ページ|

次のページ前のページ
 

裁判長バカ一代


 
今年も5ヵ月が経ちまして、いろんなことがありましたけど、何が最大のニュースと言って誰にどっても衝撃的だったのは野中英次の『課長バカ一代』が実写ドラマ化されたこと。これに尽きるんじゃないでしょうか。
 
ねえ。驚きましたよね。おれはもちろん、驚きましたよ。まさか、まさかこんなことが……。
 
と言いながらも見てないんですが、昔、マンガで読みました。で、読書ブログらしく、今回はこの本についてのお話です。
 
アフェリエイト:課長バカ一代(電子書籍)
 
〈楽天コボ〉で第一巻が無料になっていたものだからあらためて読んでみました。最初のページで主人公・八神和彦は上役から「きみに課長の椅子を用意してる」と言われる。
 
   *
 
正式な肩書は「課長補佐代理心得」というんだがね
まあ‥‥課長みたいなモンだから
 
   *
 
――と、しかし、こんな話はどうでもいい。これまでおれはこの場所で、
 
アフェリエイト:それでもボクはやってない
 
この映画が描いてることは全部嘘だという話をしてきました。今までに四つの点を挙げましたね。ちょっとおさらいしてみましょう。
 
・最初の判事が傍聴人の立ち見を許して左遷されるがそんなの当たり前
 
・「実験して物理的に犯行は不能と判明した」なんて言うけどどうにでもイカサマが利くもの
 
・家宅捜索で出たものを「それは友達にもらった」と言うやつは、バレてる嘘をまたついている
 
・刑事が「まさか起訴すると思わなかった」と人に話していても、無実と思っていたことにはならない
 
――と、この四点ですね。前に書いたが、この映画をおれは2008年にテレビ地上波で放映された一度きりしか見ておらず、その記憶だけでやってきました。まあ、考えはしたんだけどね。オンデマンド配信てので〈おうちにいながら〉見ることもできたんだけど、別になあ。
 
画像:それでもボクはやってない・オンデマンド配信画面
 
いいや、記憶だけでいこう、と。どうせあくまで本当に語りたいのは帝銀事件についてであって、これはその参考にしてもらおうというだけだし。あらためて見れば思い出すこと、新しく気づくこともたくさんありそうな気もするけれど、細かいことを突っつくだけになりそうな気もまたするし。
 
それにきっと、探せば大勢、書いてる人がいるんじゃないかな。劇場公開直後とか、DVD発売直後、テレビ地上波放映直後に「これは嘘だ、ここも嘘だ」とブログに書いて出した人が千人もいるんじゃないの。おれなんかよりもっとずっと詳しい人が。ウェブ海底のヘドロの中に、それがたくさん眠ってますよ。
 
だからもっと知りたい人にはそれを掘り出してもらうことにして、おれ自身はまたどっかで無料放映でもされて、見ておもしろいことが書けそうならば書くということにしまして、だからもう、あとひとつだけこれを語ってこのカテゴリは終わりとしましょう。おれは最初の一回目に、立ち見を許した一人目の判事が、
 
「推定無罪の原則は絶対だ」
 
と言うのを「何とんでもないことヌカシてやがんだ」と思って見たと書きました。今回はそれについての詳しい話をすることになります。
 
……なんだけれども、さて、どっから話そうかな。やはりまず阿曾山大噴火先生のお力をもらうべきですかね。この前、痴漢は裁判では、
 
   *
 
「強制わいせつ」=女性の下着の中にまで手を入れて肌に触れた場合
「準強制わいせつ」=女性の衣服の中に手を入れて下着の上から触った場合
「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(東京以外は違う名称かも)=衣服の上から触った場合
 
アフェリエイト:裁判狂時代
 
という、この三つの「分類の仕方で間違いないんじゃないかな」と先生は書いておられると書きました。
 
素晴らしい。おれの手元に刑法や裁判の解説書が他に何冊かあるが、弁護士が書くようなものはどれもこれも、
《その分かれ目となる基準は「暴行・脅迫」を手段としたかどうかの違いである》
なんて書き方してるばかりでサッパリわからないのですよ。中でもいちばんひどいのは肝心の『基本六法』て本で、それには、
 
   *
 
(強制わいせつ)
第百七十六条 十三歳以上の男女に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
 
(準強制わいせつ)
第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心身を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
 
基本六法(楽天コボで電子書籍版が無料)
https://books.rakuten.co.jp/rk/92af87da3f6b34e1bc7e822c15e64edf/?l-id=search-c-item-img-01 
 
なんて書いてありやがって、なんなんだこりゃあ。しかしどうも、前回ここに「強制わいせつは七年以下の懲役」と書いたのは古い決まりみたいですね。今は痴漢は十年以下、傷害罪は十五年以下の懲役のようです。
 
――が、とにかく、これではなんだかまるでわからん。対して阿蘇山先生の分類はわかりやすく実際的で、それで間違いもなさそうだ。
 
でもって「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」は東京都だけの条例であり、刑法でない。刑法の補佐と言うか代理と言うか、『課長バカ一代』の八神和彦みたいなモンだ。東京都では、服の上からさわるぶんには暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をしたり、心身を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をしたことにはならず、裁判で有罪となっても罰金数万円止まり。
 
なわけか。ふうん。野中英次のマンガみたいな話だなあ。ひょっとして、日本のどこかに服の上からさわるだけなら痴漢が痴漢の罪にならない痴漢にとっての天国のような県があるのだろうか。もしもあったら、皆さんは、そこに行きたいと思いますか。
 
おれに痴漢の趣味はない(ホントですよ)から行きたいと思わない(本当にホントですよ)が、周防正行ならばもちろん行きたいに違いない。この男は冤罪が許せないから『それでもボクは』を撮ったんじゃない。許せないのは痴漢をやった人間が痴漢の罪で裁かれること。法廷に立たされることであり、〈強制わいせつ罪〉だとか〈準強制わいせつ罪〉とか、〈公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反〉なんてルールがまかり通っていることなのだ。
 
周防正行にとってそれは悪法だ。周防正行にとって悪法は法でなく、悪法を守る裁判官も裁判官の風上におけぬ裁判官だ。周防正行にとっての悪法を破ってくれる裁判官が正しい裁判官なのであり、それが左遷されてしまう現実が許せない。だから国と東京都に、
 
「これらのくだらん決まりを無くせ! 電車の中で好きなだけ女にさわっていいことにしろ!!」
 
と言いたくて映画を作ったのであり、女に対して、
 
作品名:端数報告 作家名:島田信之