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さてこの阿曾山大噴火なる人物が裁判所の警備員の眼に怪しく映るかどうかはおれにはなんとも言えんが、しかし、靴下履きでもう一度ゲートをくぐらされたというのは、むしろ当然じゃないでしょうかね。たとえば、2001年の〈9.11テロ〉。あの事件の犯人達は、カッターナイフで機の乗客と乗務員を脅して計画を実行したのが、ユナイテッド93便の乗客が電話で送ってきた情報でわかっている。当時はカッターナイフ程度のものは、そんなものでハイジャックが可能だとは誰も思わずに見逃され、機内に持ち込みが許されていたのだ。
 
で、ドカーンと大噴火。おわかりだろうが、この本が書かれた頃はまだ麻原が生きている。オウム信者が安全靴で警備員を「なあんだ」と言わせ、実はアイスピックか何かを中に忍ばせて法廷に入る。十人くらいで一斉に看守を襲ってブスリとやり、同時にビルの正面からやはり十人くらいの信者が〈AK〉を手に飛び込めば、麻原を連れ出すことは不可能でもなかっただろう。
 
てわけでチェックが適当じゃ困る。十何年も経っているから、今ではより優れた装置に取り換えられていると思うが、オウムに限らないでしょう。法廷は、たとえば殺人事件の場合、子を殺された親だとか、妻を殺された夫だとかが凶器を持って入り込み、犯人に復讐しようなんてことが有り得る場所です。だから当然、そんなことが起きないように気を配らねばなりません。また、そうまでいかなくても、タマゴを投げるやつなんてのが、いつ出ないとも限らぬ場所です。
 
だから当然、そんなことが起きないように気を配らねばなりません。どうです、タマゴ。中に持ち込み、投げるやつが出ないとも限らないとは思いませんか。
 
おれが一体、なんの話をしているのかわからない? だから、ニワトリのタマゴですよ。鶏卵の一個や二個なら、傍聴人が法廷に隠し持って入るのは難しくもないでしょう。だからやって、中で投げる人間が出ないと限らないのじゃないか。
 
つまり、検事やら弁護士やらに投げつけるという話です。冤罪運動の支援者が、検事にタマゴを投げつける。逆に凶悪殺人犯の事件なら、弁護士にタマゴを投げつける。
 
生玉子をね。そういう話。どうです、いつそんなことが起きないとも限らない。法廷とはそんな場所だとおわかりにはならないでしょうか。
 
てゆーか、アナタ、やってみません? 幼女強○魔(○姦ってここに書いたら機械でハネられるんだよな)なんかをかばって、「彼に自由を!」とか叫んでる弁護士野郎に法廷でナマのタマゴを投げつけてくれる人はどこかにいませんかね。おれはやらんが、やってくれる人がいたなら尊敬するね。
 
「おれがやりたくてもできないことを平然とやってのけるゥ、そこにシビレる、憧れるゥッ!」
ってなもんで。つーか、もしそんなのが流行(はや)ると、検事がみんなタマゴを投げられるようになるのか。イカレた人権野郎どもに……それはそれでおもしろいような気もしますけど、やはりそんなことは起きないように気を配らねばなりません。
 
それが法廷という場所なのが、おわかりになると思います。阿曾山という人は他に、
 
アフェリエイト:B級裁判傍聴記(中古本)
 
なんて本を出していて、中に作家の辛酸なめ子と対談する章があり、
 
   *
 
なめ子「席が満席だとどうなるんですか? 立ち見ですか?」
阿曽山「立ち見は禁止です。たまーに、今までで3〜4回くらいですけど、裁判官によって認めた例はありますけどね。」
 
   *
 
なんてことが書いてある。
 
傍聴人の立ち見は禁止。当然でしょうね。皆さんそれがおわかりになると思いますが、しかし、あれれ、ちょっと待てよ。実はここまでが話のマクラで、ここから本題なんですが、皆様、もしやこの映画をご覧になっていないでしょうか。《法廷では立ち見禁止》といってこいつを思い出した方はございませんでしょうか。
 
アフェリエイト:それでもボクはやってない(中古DVD)
 
2007年の雑誌〈キネマ旬報〉が選ぶ日本国内映画の一位。ってんだけどこの映画、おれは昔にテレビ地上波でやったとき、
 
「なんだ全部嘘じゃねえか。まあこんなこったろうと思ったけどよ」
 
とだけ思ってそれきりでした。けどこれから帝銀事件の話を再開するにあたり、やはりこいつを語るべきと考えまして、ちょっとしばらくこの映画の話をしたいと思います。帝銀とは直接関係ないけれどどうかお付き合いください。
 
で、どうしようと思ったけどあらためてこれを見直すことはせず、2008年の初め頃にテレビ放映を一度見た記憶だけで書くことにしました。うわはは、どうなるだろう。そういうシロモノなもんですから、おれがこれからする話は、例によって信じないでくださいね。
 
主人公の〈ボク〉は痴漢で捕まって、無実を訴え裁判になる。すると〈ボク〉のことなんか別に知らないようなやつらが、何百人も集まってきて支援運動が広がってゆく。「〈ボク〉さんは決して痴漢をする人ではありませーん! だからこれは冤罪でーす!」
 
というような映画でしたが、ご覧になっている方ならご記憶でしょう。そんな者らを役所広司が演じる正義の熱血弁護士が、公判一回目の法廷に、「定員なんか無視していいからどんどん入れ」とうながして、
 
「〈ボク〉さんの無実を信じる人がこんなにたくさんいるってことを、裁判官にアピールすることになりますから」
 
だとかなんとか言う。支援者達は「え?」ってな顔で戸惑いながらも傍聴席に入っていき、中は立ち見超満員。
 
で、確か裁判所の人間がこれに、「困ります。定員以上に入らないでください」とか言って追い出そうとするのを裁判官が、いいと言って許すんだっけ。おれは昔に見てあきれたね。裁判について知らない人は納得して見たかもしれんが、これがまったくの嘘なのをおれは知っていたのだから。
 
さらにこの裁判官が、「推定無罪の原則は絶対」なんてとんでもないことを言う。よくもまあまあと思いながらに見ていると、しかし途中で退場し、別の判事に変わります。演じるのは小日向文世。〈ボク〉の支援者どもに向かって、
 
「なぜ定員以上に人がいるんですか。立ち見の人は出ていきなさい」
 
支援者「前の判事さんは『いい』って……」
 
「その人はその人です。私は認めません」
 
イヤッホウ! おれ、昔にこれ見たときに、手を叩いて喜んじゃったよ。そうです。それでいいのですが、しかし映画はこの後になんだか、
 
「前の判事はどこかに左遷させられてしまったらしい。正しい人はみんなそうなってしまうんだ……」
 
だとか言うやつがいやがって、ふざけんじゃねえ、そんなトンデモ裁判官はな、左遷どころか罷免して、資格を取り上げ、弁護士にもなれねえようにするべきなんだ。そこまでやらないこの国は甘い。間違ってるよ。
 
作品名:端数報告 作家名:島田信之