北へふたり旅 31話~35話
妻はユーティリティクラブをつかったことがない。
初めてのクラブに興味をしめす。
ユーティリティは、フェアウェイウッドとアイアンの中間クラブ。
「女性用アイアンは、7番からが主流です。
5番ウッドと7番アイアンのあいだを埋めるクラブが、
5番ユーティリティです。
別売りの5番アイアンと6番アイアンもありますが、非力な方には
使いやすいユーティリティをおすすめしています」
「ふぅ~ん。で、つかいやすいの、これ?」
「好みもあります。でも私はおおくの女性これをおすすめしています」
「山ちゃんが言うなら信用するわ。
振ってみたいわね、今すぐにでも。
でもね、残念ながらまだ振ることができないの、わたし」
「なにか不具合でもあるのですか?」
「右の手首を骨折しちゃったの。
チタンプレートで固定したので痛みはありませんが、まだリハビリ中なの。
なかなかもとに戻らないのよ、握力が・・・」
「なるほど。そういう事情があってLシャフトに変更したのですか。
なかなか的を得たナイスな判断だと思います」
「リハビリが中だるみ状態なの。
説教するより、ニンジンを鼻先へさげたほうが速いと考えたのかしら」
「あと10年ゴルフをなさるのなら、いまLシャフトに
切り替えるのは有りです。
ながく楽しんでください。ゴルフ人生を」
「夢があるのよわたしたち。
笑っちゃ駄目よ。
ゴルフの聖地・セントアンドリュースへ2人で行きたいの」
「いいですねぇ~。
世界中のゴルファーが一度は訪れたいと夢見ている
セント・アンドリュース。
スコットランドです。
ゴルファーはみんな夢に見ていますが、実際には遠いですからね」
「そうなの。遠いのよ。セントアンドリュースは。
わたし高所恐怖症なの。だから飛行機はぜんぜん駄目。
船で行くしか方法がないでしょ。
そうすると聖地へ着く前に、豪華な船旅に費用がかかりすぎて、
破産してしまいそうです・・・うふっ」
(35)へつづく
作品名:北へふたり旅 31話~35話 作家名:落合順平