北へふたり旅 31話~35話
北へふたり旅(34) 第三話 ベトナム基準⑭
妻の顔を見て、顔なじみのクラフトマンが飛んできた。
「お待ちしていました」最上級の笑顔を見せる。
店舗のほぼ中央。クラフトマンの作業部屋がある。
クラブを加工するための道具が、所狭しと並んでいる。
「頼まれていたLシャフトのゼクシオ9です」
妻のためのクラブを抱えてきた。
シャフトはフランスボルドー産のボルドー色。
妻が好む色だ。
日本酒や焼酎は、ほとんどが無色透明。
日本の色彩に酒に由来するものはまったくない。
ワインやウィスキー、コニャックは淡い黄色から褐色、
赤紫色まで存在する。
酒は大人を酔わせ、夜の社交を彩る。
深みのあるワイン色の赤には幅広いバリエーションがある。
ワインレッドは濃い紫がかった赤で、ボルドーの赤は暗い。
「わたしのために頼んでおいてくれたの?」
「いらないならキャンセルしてもいいよ」
「あなたからのひさしぶりのプレゼントです。
辞退するなんてもったいない。あら・・・」
3・4・5のフェアウェイウッドの中に、5番ユーティリティが混じっている。
「5番ユーティリティ?」
作品名:北へふたり旅 31話~35話 作家名:落合順平