北へふたり旅 31話~35話
北へふたり旅(33) 第三話 ベトナム基準⑬
妻の骨折から3ヶ月が過ぎた。
週2回のリハビリの結果、「本日でリハビリは終わりです」
ついに終了の日がやってきた。
手首に、5㌢のうすい傷跡がのこっている。
切開時のメスの跡だ。
冬にむかい日ごと気温が下がる中、「すこし冷える」と、
チタンプレートの入った手首を気にしている。
3ヶ月間を完走できたのには理由がある。
リハビリが中盤にさしかかった頃、熱意が少し冷めてきた。
成果が中だるみのせいもある。
「手首に負担がかかるから、重いものを持ってはいけないんですって。
すすんでいるのかしら。わたしのリハビリは?」
手術した翌日から、手首のリハビリははじまった。
週2回が3ヶ月つづく。
さいしょのうちは、張り切って出かけて行った。
しかし。日にちがすすむにつれ、熱意が沈んでいく。
ゴムボールを握りしめることもなくなった。
調理や洗濯、右手をかばいながらの掃除にそれほど不具合は見えない。
2ヶ月が過ぎた頃。「すすまないリハビリに意味があるのかしら?」と妻がつぶやく。
農家の仕事は休業中。
2人分の家事がおわると、あとは退屈だけが待っている。
キュウリがつづいているうちは、出勤できない。
10キロを超えるコンテナの持ち運びは、右手に負担とストレスを溜める。
キュウリの期間中は、ぜんぶ休めとSさんから許可が出た。
これが裏目に出た。
「・・・だって退屈なんだもん」
作品名:北へふたり旅 31話~35話 作家名:落合順平