北へふたり旅 26話~30話
北へふたり旅(29) 第三話 ベトナム基準⑨
パートのトップは、古参のシゲ婆さん。
シゲさんは10年目のベテラン。
立場はなんとなく数人いるパートの頂点。
別にSさんからリーダーとして、指名されているわけではない。
本人が勝手にそう思い込んでいるだけだ。
「あたしゃこのウチの、野良番頭さ」というのがシゲ婆さんの口癖。
初めて聞く日本語だ。
どういう意味で言っているのかシゲさんの真意がわからない。
野はたんぼや畑のことをいう。
野が複数形になったものに「ら」がついて「野良」。
彼ら、とおなじつかいかた。
ただし、「良」の漢字は当て字。良いという意味は含まない。
田や畑で耕作することを「野良仕事」という。
野良仕事を唄った童謡に、「待ちぼうけ」がある。
歌に登場する主人公は、平凡な一人の百姓。
真面目に畑を耕し、手間暇かけて作物を収穫し、生活していた。
ある日、畑の隅の切り株に野うさぎが激突。
思いがけず転がり込んだ獲物を持ち帰り、ごちそうにありつく。
「こいつはいい。
待っているだけでごちそうが食べられる!」
作品名:北へふたり旅 26話~30話 作家名:落合順平