北へふたり旅 26話~30話
「いままでのように、1本1本仕上げるのじゃなくて、
束のまま仕上げる?」
「畑で収穫しながらの荷ごしらえは、ウチでは無理だ。
しかしいままでのように、1本ずつこしらえていたのでは効率がわるい。
7~8本まとめて持ち、根元の汚れと双葉を落とす。
そうすりゃいまの倍は出来る」
それでいいなら、たしかに効率はあがる。
「それだけじゃねぇぞ。
パートが帰った5時以降は、出来高払いを取り入れる」
「出来高払い?」
「機械を動かして袋詰めしていたんじゃ、俺たちが終われねぇ。
手詰めにして、出来高払いにすれば一石二鳥だ。
連中はいままで以上に稼げるし、おれたちは5時であがれる。
思いついた瞬間、これはわれながら、グッドアイデアだと思った」
実習生を使うのは楽じゃない。
パートなら仕事が終わった時点で「はい、お疲れ様」と終わりにできる。
しかし実習生はそうはいかない。
厚生労働省の規定によれば原則、週40時間。
1日8時間を超えて労働させてはいけない、と書いてある。
毎週1日の休日か4週間をつうじて、4日以上の休日をあたえろ、とある。
裏をかえせば1日8時間の労働を保障しろ、と言っている。
天候や温度に左右される農業のばあい、1日の作業量は不安定になる。
よほど大型の農場でない限り、無尽蔵で働けるわけではない。
海外からの実習生を、いちはやくとりいれた茨木県のばあい。
ふるくからのメロン農家が、ホウレンソウ農家に転業したという報告がある。
メロンの収穫は年一回。これでは実習生に年間をとおした給料をはらえない。
やむなくホウレンソウへ路線を転換したという。
おなじことが、この群馬の田舎でもおころうとしている・・・
(29)へつづく
作品名:北へふたり旅 26話~30話 作家名:落合順平