北へふたり旅 21話~25話
北へふたり旅(25) 第三話 ベトナム基準⑤
「なっ・・・なんだこれはっ」
会議から戻ってきたSさんが、ハウスの入り口で悲鳴をあげる。
「おい!。いったいどうなってんだ!。
葉っぱが残っていねぇぞ。素っ裸じゃねぇか。
これじゃキュウリが風邪をひいちまう!」
キュウリが風邪をひくはずがない。
例えの話だ。
「状況におうじて葉を欠けと言った。
しかし、ここまで葉を取れと言った覚えはない。
これじゃ葉っぱをとり過ぎだ!。
どうなってんだ。
誰が欠いたんだ。テプか、ドンか、トンか!」
目の前に、キュウリの幹ばかりがひょろひょろと立っている。
葉はほとんど残っていない。
天に申し訳程度に、大きな葉が数枚、残っているだけ。
よくぞここまで、葉を欠いたものだ。
「ボスは2~3枚。さらに4~5枚と云った。
全部足すと8枚。両側から8枚ずつ欠いたら、こうなった」
テプはSさんを、ボスと呼ぶ。
葉っぱ欠きは、2人ひとくみでおこなう。
この日はドンとトンがカップルになり、テプはわたしとコンビを組んだ。
裏と表から葉っぱを欠いていくと、合計で16枚の葉が消えることになる。
ドンとトンが入った列だけが、じつに寒々とした光景になっている。
作品名:北へふたり旅 21話~25話 作家名:落合順平