北へふたり旅 21話~25話
北へふたり旅(23) 第三話 ベトナム基準③
3人目のベトナム研修生は、予定より3日遅れてやってきた。
「ようやく来たぜ。
トンだ。よろしくな。おい、みんなに挨拶しな」
トンが一歩前に出る。
「おはようございます。
トンと言います。これからよろしくお願いします」
トンが、ペコリと頭をさげる。
(お・・・流ちょうな挨拶だ。日本語に問題なさそうだ)
(ところがどっこい。
やっこさん。日本語で言えるのはこれだけなんだ)
Sさんが顔を渋らせる。
(これだけ?。九官鳥のようにこれだけを覚えてきたというのか?)
(そうさ。あとの日本語はチンプンカンプンだ。
どうにもならねぇ。しかたねぇから翻訳機を買ってあずけた)
(翻訳機?。日本語をベトナム語に通訳してくれる機械か。
いまどきは便利な道具があるもんだ。
それなら問題はないだろう)
(3万2千円だぜ。最先端の音声翻訳機を買った。
ところがよ。精度に問題があるらしい。誤変換がやたとおおい。
テフとドンに言わせると、あやしいベトナム語に変換されているらしい)
(どういうことだ?)
作品名:北へふたり旅 21話~25話 作家名:落合順平