北へふたり旅 21話~25話
北へふたり旅(22) 第三話 ベトナム基準②
午後5時。
S農場の1日の仕事がおわる。
9月初旬のいまは、キュウリの手入れがおもな仕事。
30㌢ほどで植えた苗が、いまは1mちかくまで伸びている。
キュウリはインドのヒマラヤ山麓が原産地。
生育は、とにかく早い。
つるが旺盛に伸びる。苗植えから30日余りで収穫期にはいる。
オクラやインゲンなどとおなじで、果実類の中でもっとも生育がはやい。
帰る途中。行きつけの店・ファーマーズへ寄る。
名前でわかるとおり、さいきん建ったばかりの農協系のスーパーだ。
作業着のまま歩いても、さほど目立たないのがうれしい。
毎日決まった時間に寄るため、レジのおばちゃんと顔なじみになった。
いつものように夕飯のための買い物を手早くすませ、店を出る。
「ただいまぁ」
「お帰りなさい」退屈そうな声が返って来る。
「腹、減ったろう。すぐに夕食をつくるから」
「急がなくていい。
ほとんど動いていないんだもの。お腹もすきません」
「そういうな。あとの予定がつまってる」
「そうね。贅沢は言えません。ありがたいことです。
三食昼寝つきのうえ、お風呂までいれてくださるんですもの。
感謝しています」
作品名:北へふたり旅 21話~25話 作家名:落合順平