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電子音の魔力

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 この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。ご了承願います。

                顔を覚えられない

 今年から高校生になった藤木瀬里奈は、中学生まで持つことを許されなかったスマホを持つことができて喜んでいた。中学の頃までは学校に持っていけば、授業中は先生に預けなければいけなかったので、それくらいならということで、持ちたいという気持ちにはなれなかった。
 元々、瀬里奈の父親は新しいものが好きにはなれず、いまだにガラケーという、いわゆる「モノクロ人間」と。自分でも言っていた。
 瀬里奈の母親がどちらかというと、新しいものに興味を持つ方だったが、飛びつくというほどのこともなく、近所の奥さん同士の話に合わせられる程度のものだった。
 中学時代から瀬里奈にはあまり友達が多くなかった。
「彼女、変わっているから」
 というのが、まわりの共通の意見だった。
 流行に興味を持つわけではなく、今どきの女の子という雰囲気はまったくなく、むしろ昔に流行ったことなどに興味を持つほどだった。
 学校でも好きな教科も歴史ということだった。
 今では歴史を好きな女子を、
「歴女」
 などという言葉もあるくらいで珍しくもないが、中学生で興味を深く持つのは珍しいのではないだろうか。
 学校で習う教科としての歴史というよりも、本や雑誌で見る歴史に興味を持ち、学校の成績は決していいものではなかった。そのくせ裏話的なことは結構知っていて、女子相手よりも男子生徒との話の方が合うくらいであった。そういう意味でも流行に置いて行かれた紗理奈と、敢えて友達になろうという女子はほとんどいなかった。
 あまり目立つことのない生徒だった瀬里奈だったが、そんな瀬里奈のことを気にしている男子は少なくもなかった。だが、男子としても、
「瀬里奈に興味を持っている」
 ということが分かると、女子の間で、
「変わり者」
 というレッテルが貼られるようで、なるべく人に言えず、一人の紋々とした気持ちになっていた。
 実際に瀬里奈に興味を持っている男子生徒は、彼ら自身「変わり者」だと自覚している人が多かった。
「自他ともに認める」
 という変わり者だったが、似た者同士というわけでもなかった。
 ストーカー予備軍というほどひどい感じの変わり者はいなかったが、男子生徒からも女生徒からも気持ち悪がられている人も多かったのだ。
 そんな連中が瀬里奈のことを気にしているというのは、見ていると分かるようで、そんな連中に気に入られている瀬里奈への視線も、おのずといい視線ではなく、
「彼らと同類」
 とまで思われるほどになっているようだった。
 変わり者だという意識を瀬里奈はよく感じていた。瀬里奈は自分を気にしている男子がいるという意識もあり、彼らが変わり者であることを意識することから始まった。
 瀬里奈は自分がヲタク的なところがあるのを自覚していたのだが、まわりは彼女にヲタクというよりも、男性的なところがあることに興味を持っていた。
 彼女を気にしている男性は、なよなよしたタイプの男性が多く、女性からは、
「気持ち悪いわ」
 と言われている連中が多かった。
 彼らの特徴は、普段はあまり話をしないのだが、自分と同類と思われる人たちと話す時は、やたらと早口でまくし立てるように喋るのだ。普段、内に籠めている性格をこの時とばかりにまくし立てるのだった。
 話の内容も聞いていて、
「いかにもヲタク」
 を思わせる。
 しかも、彼らの特徴としては、恐怖ものを好きなところに共通している。ホラー番組が好きなことを人にいうと引かれてしまうという意識から、話を控えていた。
 別にまわりからいまさら嫌われたからと言って、傷つくわけではないのだが、嫌われれることを意識している。本人たちは自分たちが嫌われているという意識があるくせに嫌われるのを嫌がるというのは不思議な心理ではあるが、
「逆も真なり」
 という発想から来ているものなのかも知れないと感じた。
 瀬里奈は、それまでヲタクというものを特別な存在として、自分とは違うものだという意識を持っていたことで、あまり考えないようにしていたが、自分が変わり者だという意識を持ってから、ヲタクを意識しないわけではいかないように感じた。
 ヲタクを意識するようになると、さらに自分を意識している男性たちが、さらに気持ち悪くなってきて、
「彼らは別の人種なんじゃないか?」
 と思うようになった。
「自分とは違う」
 という意識が前提にあるので、別の人種という発想をどんどん膨らませることができた。
 しかし、まだ自分が当時中学生であり、やっと思春期に差し掛かったくらいであるという思いから、
――まだまだ子供なんだ――
 という思いを強く持っていたことも事実で、膨らませる発想にも限界がある。
 ヲタクに関しては。最近はドラマなどでも取り上げられることもあって、瀬里奈には身近に感じられるものとなった。
――でも、興味を持たなければ、そんな番組も見ないわよね――
 と感じているのも事実で、考えてみれば、最近のドラマがゴールデンタイムというよりも、深夜に放送している番組が多いことからも、ドラマ自体がヲタクであったり、変わり者たちをターゲットにしたものが多いのではないかと思うようになった。
 最近のドラマでは、ネット関係の話であったり、地下アイドル関係の話が多かったりと、若者中心の話なのだが、そんな若者中心の世界に入り込む大人の人を描いたものも増えているのが特徴であろう。
 そういう意味では、若者をターゲットにしているわけではなく、大人にも興味を持たせるものとしての作品も多いのではないだろうか、それを思うと、最近の番組は、
――時代を反映させながら、老若男女それぞれに訴えかけるものが増えているんだな――
 と思うようになった。
 ヲタクを中心とした番組を、実はまわりの大人の人も結構見ているといううことを、何かの雑誌で見たことがあった。どこで調べたのかは分からないが、インタビュー形式だとしても、果たして大人の人がインタビューされたからと言って、本当のことをいうだろうか?
 それを思うと、深夜のドラマ番組というのもあなどれないという気がしてきた。
 瀬里奈は、ドラマに関しては、実は中学時代から造詣が深かった。最初は夕方の帯でやっていた再放送ドラマに興味を持ったからだ。
 最初は本当に漠然と見ていただけだったが、どこかに興味を引くところがあった。それがどこなのかすぐには分からなかったが、分かってみると自分でも納得が行った。
――懐かしさを感じる――
 まだ中学生の瀬里奈が大人のドラマで懐かしさを感じるというのはおかしな話だが、今から思うとその理由も分かる気がする。
――あれは、新鮮さから来ているものだったんだわ――
 というもので、新鮮さは後になって気付いたものだったが、気付いた時だけ、
――最初から分かっていたような気がする――
 と感じさせた。
 そういう意味での懐かしさもあったのかも知れない。そのことが瀬里奈がそれ以降に何かを考える時、
――自分の中で矛盾を感じているような気がする――
作品名:電子音の魔力 作家名:森本晃次