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ふしじろ もひと
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novelistID. 59768
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『封魔の城塞アルデガン』第3部:燃え上がる大地(前半)

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 アザリアが叫んだとたん、壁際を埋めつくす魔法装置が赤い光の筋をいっせいに放った。それらがガラリアンの頭上の中空で縦横にからみあい魔法陣を織りなした。魔法陣の真ん中からの赤い光がガラリアンを包み込んだ。すると狂える魔術士の姿が大きくゆらぎ、ねじれ始めた。彼の内部のなにかを魔法陣が吸い上げ、それが上空の炎に転送されていった。
 妄執を炎に移している! それは直感だった。己の妄執で炎をアルデガンに導くつもりだ!
 考えるより早く体が突進した。王も近衛兵も反応できぬうちにアザリアは祭壇のガラリアンに迫った。
「こんなことをさせるために助けたんじゃないわっ!」叫び声が背後に尾を引いた。
 だがねじれて原形を留めていない腕が振りぬかれると、気弾がアザリアを吹き飛ばし、彼女は石畳に叩きつけられた。あばらが折れた激痛に薄れゆく意識のなかでアザリアが最後に目にしたのは、ぬけがらと化して崩れる火術師の姿と地獄の太陽さながらに天空を滑り始める巨大な火の玉だった。
「我が大望は成就せり!」叫んだミゲル王が命じた。
「いまこそノールドの異民族どもを討伐し、かの地をレドラスの威光にて押し包まん! 余も出陣するぞ、戦車を引けいっ」

「捨て置け、討伐の前に同族の血を流すな。どうせなにもできはせぬ」
 アザリアにとどめを刺そうとする近衛兵を王は制し、階段へと急いだが、降り口で振り返るとまたも嗤った。
「余が凱旋しても生きておれば処遇を考えてやろう。そこまでの強運であれば、ぜひあやからせてもらおうぞ」

 重い扉は閉ざされた。昏倒したアザリアを残したまま。