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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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最後の鍵を開く者 探偵奇談21

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「…俺、」

ぽつりと、瑞の言葉が落ちる。

「夕島が先輩に出した交換条件のこと、ずっと考えてるんだ」

命をとるか、記憶をとるか、そう迫られたことを言うのだ。

「自分の命と引き換えに、俺の大事なひとが幸せでいられるなら、俺はそうしたい」

瑞くんてば、と颯馬が苦笑するが、瑞は真剣だった。

「それで償えるなら、そうする」

思いつめているのだ。

「それだけでもきっと、足りない…俺のしたことは、本当に罪深いんだ…」

伊吹が見た光景を、瑞も見たのだ。やりなおすたびに壊れていく夕島柊也の幸福と、その最期を。生きたい、今度こそと願うのもむなしく、幸福と引き裂かれていく魂の叫びを。

「許されやしない…俺は天狗の言葉の意味を、ちゃんとわかってなかった…先輩といられることが嬉しくて、それが全部で、代償もなしにそんなうまい話…あるわけないのに」

瑞の言葉を聞きながら、伊吹はどこかで聞いた話を思い出す。誰だって誰かの犠牲の上に生きているのだという、説教めいた話だ。人間が動物の命を喰らって生きるように。

「あのさ、前にも言ったと思うんだけど」

颯馬が暗い雰囲気を吹っ切るように、いつもの笑顔を浮かべて言う。

「許されない命なんて、ないんだってば」
「…」
「何を犠牲に生まれても、何を踏み台にして生きていても、生まれた以上生きる権利があるんだって。それがどれほど罪深い命でも。俺はそう思うんだ。生きたいっていうのは、命を持つ者の権利だよ。その権利をどう行使してどう生きるかっていう過程で、許されない行いはあるかもしれないけどさ」
「颯馬」
「俺は諦めないよ。力をもつ者として、瑞くんたちを生かすために足掻くよ。二人にその気があるのなら」