誠に遺憾
「この先に…」
私が立った大廊下は、はるか先まで続いていた。
「─ <中間界>へ続く門があるのか」
<天上界>に入れず <地下界>にも堕ちない死者が、唯一身を置く事ができる場所。それが <中間界>だ。
不本意ながら私も、そこに赴くしかない。
「お待ちしておりました。」
意を決して歩き始めようとした刹那、背後に気配がした。
「貴公は、かの高名なシトペモロン殿で御座いますな?」
振り返った私に、小柄な男が微笑む。
「委細は承知しております。小生は、<冥忌士>で御座いますれば」
<冥忌士>とは、人を<地下界>へと堕とす存在だ。
「…どんな誘惑をされても、私は堕落しない。」
「誘惑などいたしませんし、堕落されても困ります」
一礼する<冥忌士>。
「何せ小生は、貴公を勧誘に参ったのですから」