誠に遺憾
「布教に貢献多き貴公に、こう告げざるを得ない事は 誠に遺憾なのだが…」
室内に、<大天上使>の声が低く響く。
「<天上界>は、貴公を 迎え入れない」
法壇に駆け寄りそうになる衝動を、私は懸命に抑える。
「─ 理由を伺って 宜しいですか?」
壇上の<大天上使>は、書見台に落とした目を上げようとしない。
「人命を救った罪だ」
「罪?! <至高の存在>の教えを守った事が!?」
「貴公が救命した者が、問題なのだ──」
ようやく顔を上げる、<大天上使>。
「ドハママンを承知しておるであろう」
「…<至高の存在>の教えを否定する者たちの首領ですな」
「その 許すべからず輩の命を、貴公は命を救っておるのだ。幼い頃に──」