北へふたり旅 16話~20話
北へふたり旅(19) 第二話 チタン合金 ⑨
手首骨折の手術は進歩している。
従来の手術は手術後も、ギブスによる固定をおこなってきた。
しかし。ギブスで固定している時間が長くなると、外したとき
手首は動かない。
力も入らない。当然リハビリの時間が長くなる。
あたらしい金属・チタン合金の登場が、手術をかえた。
チタン合金は弱い骨でも、しっかり固定することができる。
手術は全身麻酔。1時間でおわる。
傷口は手首に5㌢ほど。
入院も2日から3日ですむ。
午後2時。予定通り妻が手術室から戻ってきた。
妻の顔はまだもうろうとしている。覚醒の途中だ。
「先生が説明します。旦那様は診察室へどうぞ」
言われるまま診察室へ行くと、先生が上機嫌で待っていた。
「うまくいきました。傷も綺麗なものです。
完璧です。あとで見てやってください」
スクリーンに、術後のレントゲン写真があらわれた。
正面から撮ったものに、3角形のプレートが写っている。
側面から撮ったものに骨に食い込んだネジが3本、ネジ山まで
鮮明に映っている。
作品名:北へふたり旅 16話~20話 作家名:落合順平