北へふたり旅 11話~15話
北へふたり旅(15) 第二話 チタン合金 ⑤
鈍い音がひびいたあと。
12歳年下美女のボールが、左の斜面に向かって飛びだしていく。
「あっ・・・ひっかけちゃった」
ミスしたことは、本人がいちばん分かっている。
ミスショットの代表格、それがひっかけ。
狙いを定めた方向でなく、最初から左へ飛びだしてしまうことをいう。
飛び過ぎれば、雑木林へ落ちる。手前なら、朝露の斜面。
木立ギリギリ、美女のボールが落ちていく。
固いものに当たったのだろうか、ポンとおおきく跳ねあがる。
「木の根にあたったかな?」
全員の目が、跳ねたボールを追う。
2度、おおきく弾んだ後、美女のボールが斜面の向こうへ消えていく。
OBは免れたようだ。
4人を乗せたカートが、第2打地点へ急ぐ。
フェアウェイのど真ん中に、ライバル美女のボールが見える。
妻のボールはライバル美女の後方、10ヤードの地点に落ちている。
しかし。12歳年下美女のボールはどこにも見当たらない。
作品名:北へふたり旅 11話~15話 作家名:落合順平