北へふたり旅 11話~15話
斜面で2度はねたあと、草の中へ消えたようだ。
全員の足が斜面へ向かう。
ボール探しの時間は、5分。(2019年の新ルールでは、3分)
漫然と探してもボールは見つからない。
探しかたに、コツがある。
同伴競技者が打つとき、落下点まで見届けることが大切だ。
出来ているようで実はこれが出来ていない。
見ているようで落下地点まで見ていない。
多くの場合、途中で視線を切っている。
球筋もチェックポイントのひとつ。
右へ曲がるタイプか、左へ曲がるのか、把握しておきたい。
トラブルになった時どちらへ消えたか、探す目安になる。
飛距離の把握も大切。
おおくのゴルファーが、なぜか前方探す。
ボールとクラブが進化して飛ぶようになったとはいえ、
その人の飛距離の50ヤード先を探しても意味がない。
飛距離の手前から探していく。これもボール探しの鉄則のひとつ。
おたがいを知り尽くしたライバルは、ボール探しも速い。
12歳年下美女のボールは、175ヤード地点の斜面の中に落ちていた。
さいわい前は空いている。
運が味方すれば、グリーンに乗りそうな雰囲気さえある。
「日頃の心がけが良いと、ゴルフの神様がほほえんでくれるのよ。
狙えるわ。あなたの腕なら。うふふ」
ボールを見つけた妻が、ハンカチを置く。
目印を置くことも大切だ。
せっかく見つけても目印がないと、また見失う。
「つぎはわたしの番。
絶好のポジションに、ボールが有るんだもの。
負けずに乗せたいわ、わたしも」
向きを変えた妻が、斜面を下りはじめる。
その姿を遠目に見ていて、なんだか危なっかしい。
露の斜面はすべりやすい。
注意しているように見える。しかしそれでもなんだかバランスが悪い。
(足を滑らさなければいいが・・・)
そんな危惧を感じた時、妻がグラリとバランスを崩した。
(16)へつづく
作品名:北へふたり旅 11話~15話 作家名:落合順平