北へふたり旅 11話~15話
距離のハンデもある。
上級者はいちばん長いバックティ。白のレギュラーティは一般男子。
女子は40ヤードから100ヤード前の赤いティ。
さらにその前に70歳をこえた人のために、ゴールドのティがつくられる。
性別や年齢差を越えて、同時にプレーを楽しめるのがゴルフ、といえる。
赤いティへ着いた瞬間、女たちの表情がかわる。
姦(かしま)しい会話から一転、ゴルフ本気モードに切り替わる。
キャリアの長い12歳年下の美女は、オーソドックスにクラブを振りぬく。
筋力が弱いぶん身体を大きく使い、しなやかにボールを運ぶ。
たいしてライバルの美女は、男子並みのパワフル派。
女子とは思えない力強いスイング。
鋭い腰の回転とコックの粘りで強いボールを打つ。
還暦を超えた妻は力にたよらず、バランスとキレでボールを飛ばす
フェアウェイの中央、10ヤード範囲に3つのボールが並ぶ。
油断できない。実は3人ともシングルの腕前だ。
ティショットを終えた女たちが、雑談へ戻る。
あっというまに姦しくなる。
女たちの井戸端会議は、第2打地点までつづく。
2打地点へ着いた瞬間、女たちの表情が変わる。
そのぞれの道具を手に、ピンを狙うタカの目にかわる。
女3人に囲まれても、けして物見雄山の楽しいゴルフにならない。
雑談を挟んだ真剣勝負。
それがこの3人が集まったときの、いつものゴルフスタイル。
しかし。けして仲が悪いわけでは無い。
むしろ姉妹のように仲がよい。
ひとりだけ、だいぶ歳が離れているが・・・
(14)へつづく
作品名:北へふたり旅 11話~15話 作家名:落合順平