北へふたり旅 11話~15話
北へふたり旅(13) 第二話 チタン合金 ③
「ナイス・ショット!」
ティグランドに、黄色い声が響きわたる。
声の主は12歳年下の美女。
今日は女性3人を引き連れてのラウンドだ。
しかし。はやくも問題が発生している。
「あら・・・もう打ったの?」
妻が涼しい顔で振り返る。
「振り遅れ気味。いつもより右へ出た」
「あら。右へ飛んだの・・・
ナイスショットとばかり思っていたのに。
いい音に、すっかり騙されました」
井戸端会議を中断して、12歳年下の美女も振り返る。
ゼクシオのドライバーは打った瞬間、澄んだ金属音を放つ。
この音につられ、12歳下の美女は思わず、ナイスショットの声をあげた。
つまり。誰もわたしのボールの行方など見ていないことになる。
しかし。落ち込んでいる暇はない。
笑顔で運転席へ乗り込み、カートを前方へ走らせる。
ゴルフはハンデのスポーツ。
性別、年齢、実力差を考慮したハンデキャップが存在する。
打数ハンデの上限は36。
72打で回れる人と、ハンデをプラスした108打の人が同等になる。
作品名:北へふたり旅 11話~15話 作家名:落合順平