北へふたり旅 11話~15話
最奥の宿、室田館から道が里山へ入る。
左右にくねりながら坂道を3分ほど登る。
車がおおきく左へまがると、そこだけ景色が急にひらける。
左右はすでにFゴルフ場。
到着するまであと5分。クラブハウスまでの急坂を駆けあがっていく。
「誰だろうね。4人目は?。女性かな・・・」
「会長かもしれません」
会長とは地元土建業の、もと社長のことだ。
65歳をこえたため会社を息子に譲り、いまはゴルフ三昧ですごしている。
12歳年下の美女に熱をあげているという噂は、ゴルフ界で有名だ。
「ママも、自分から墓穴を掘るような人選はしないだろう。
4人目は、女性のような気がするな」
「そうかしら…
水商売の女は、利用できるものはなんでも利用するものよ。
勝手に熱をあげて、男性の方から寄って来るんだもの。
絶好のチャンスじゃないの」
「君ならそういう男と、ゴルフするかい?」
「ときと場合によります。
でも引退した今となっては、ひとさまの機嫌を取るのは嫌ですね。
気楽に楽しまなきゃ、自分のためのゴルフですねもの」
4時13分。駐車場へ到着。いつもより少し早い。
入り口に車が2台。どちらの車も見覚えがある。
赤い軽は12歳年下の美女。
もう一台は美女とつねにスコアを競い合っている、もうひとりの美女。
ということは今日は、美女にかこまれたゴルフになる。
「おはよう!」
早速、いつもの黄色い声がとんできた。
(13)へつづく
作品名:北へふたり旅 11話~15話 作家名:落合順平