Joint
「何をしとんねん! アリさんから、なんて聞いたお前ら?」
吉巻がジーンズの埃を払いながら立ち上がって、言った。
「見ての通りなんですけども」
「その女の子は入ってない。何を余計なことしとんねん」
井出は、糸井をウィンチから引きはがすようにどかせると、篠山の首からロープを外した。
「これだけ見られてんやぞ」
糸井が言うと、井出はその大柄な体を力任せに小突いた。
「お前、アリさんが殺すな言うてるもんを殺したら、どうなる思う?」
糸井が黙ったことを確認すると、井出は式野に言った。
「もう一人は?」
式野が事情を説明すると、井出は頭を掻きむしるように抱えたが、結論に達したように顔を上げて、言った。
「自分、マエあんのか?」
「いや、ないです」
式野が即答すると、井出は、式野の頭から爪先まで視線を走らせた。
「それやったら、自首せえ。過失致死で、三年か四年で出れるわ」
誰の返事も待たずに、篠山の自転車を荷台から下ろすと、井出は言った。
「人の話はちゃんと聞いとけよ、お前ら」
篠山を引っ張るように起こすと、井出は倉庫から出て、キャラバンに乗せた。自転車を積み込んで、大きく息をついた。立ち回りは、よく考えなければいけない。
気を抜いたが最後、自分達が『知りすぎた人間』になってしまう可能性もあるのだから。