北へふたり旅 6話~10話
北へふたり旅(10) 第一話 ベトナムがやってくる ⑩
テプとドンは顔つきだけでなく、性格も日本人に近い。
2人とも真新しいいでたちでやってきた。
ピカピカの作業着。汚れひとつない長靴を履いてSさんの農場へやってきた。
北関東アジアン・サービスから貸与されたものだろう。
2人一組でやって来た。
ベトナムで実習生として採用されたときから、2人はひと組に指名される。
男同士のカップル、バディが誕生する。
来日前の業務研修、日本語の勉強もいっしょ。
来日してからの一ヶ月間の研修も、コンビとして受ける。
寮でもひとつの部屋で暮らす。
もちろん派遣された先でも、2人はいっしょに暮らすことになる。
ふたり一組にはいみがある。
北関東アジアン・サービスが生み出した最新式の受け入れ方法だ。
背景は、増え続けている海外実習生の失踪がある。
失踪者は年々増え続けている。
2011年に千人弱だったが、いまや五千人をこえている。
ベトナム人と中国人の失踪率が圧倒的に高いと言われている。
しかし二か国以外でも、失踪者があとをたたない状況がつづいている。
作品名:北へふたり旅 6話~10話 作家名:落合順平