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北へふたり旅 6話~10話

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 ベトナムの派遣会社も日本の管理団体も、この問題で頭を痛めている。
失踪を防ぐ手段として生み出された、バディ制度。
おたがいパートナーとして、協力し合う。
しかし同時に、逃亡に備えて監視しあうという要素も含んでいる。
ともあれ。テプとドンはこのさき3年間を、たがいをパートナーとして
ベトナムへ帰国するまで、いっしょに暮らしていくことになる。

 ふたりからお土産をもらった

 「気持ちです」とドンが、真新しいリュクサックの口をあけた。
中から出てきたのはベトナムのコーヒーパック。
パッケージに3in1の3と書いてある。
「どうぞ」と両手いっぱいにつかんだパックを、ドサリと
わたしたちの手に
乗せてくれた。

 (ずいぶんたくさんのコーヒーパックだ・・・。
 ずいぶん気前がいいな、こいつら・・・)


 「ベトナムでコーヒーが採れるのかい?」

 「わたしもはじめて知りました。
 ブラジルに次いで世界第二位のコーヒー生産国なんですって、ベトナムは」

 「へぇぇ意外だね。ベトナムがコーヒーの大国だったなんて」

 次の日の朝。妻が、土産にもらったインスタントコーヒーを入れてくれた。
チュングエン(TRUNG NGUYEN)は、ベトナムコーヒーの
有名メーカーだという。
パッケージにNO.1 coffeeとある。
 
 「なんだぁ・・・甘いぞ!。甘すぎる」

 「あらホントですねぇ・・・
 まるで子供向けのコーヒーみたいです」

 パッケージに記載されている3in1の3は、コーヒー、砂糖、ミルクの意味。
1杯分ずつ個装されているものが多いという。
なるほど。大量にバラまくのには最適な品といえるだろう。
インスタントコーヒー20パックで、45,000ドン(約220円)
一個あたり11円。なるほど気前よく大量にプレゼントしてくれるはずだ。

 ブラックもあるという。
しかしベトナム人は、甘いものをこのむ。
あとで知ったことだがお茶請けも、かれらは甘いものを選ぶ。
日本人は渋い茶に、しょっぱいせんべいを食べるが、かれらは
甘いコーヒーに甘い菓子を食べる。

 ともあれベトナからやってきたテプとドンの3年間は、
こんな風にしてはじまった。

(11)へつづく