北へふたり旅 6話~10話
「ゴミの問題はもっと大変だ。
連中は、ゴミを出す曜日をまったく守らない。分別もしない。
汚れたふとんやマットレスを、燃えるゴミの日に出す。
なんど注意してもまったく直らねぇ。
日本のゴミ収集車はどんなものでも、持って行っていくと信じてる」
「どうにもならないのか?」
「粘り強く説明する。すると連中は分かりましたとこたえる。
しかし数日後にはもう雑多なゴミが、収集所に出ている。
いたちごっこの繰り返しさ。
何度注意しても、いっこうに改善されなかった」
「なるほどなぁ。
しかし俺も困っている。2日後にはベトナムがやってくる。
住まいを確保してないから待ってくれと、いまさら言えねぇ。
俺にも立場がある。
なんとかしてくれ。頼むぜ。恩に着る」
「駄目だ。あきらめろ。外人だと言わなかったお前が悪い。
無理なものはむりだ」
「それなら俺も腹をくくる。
おまえにゃ悪いが、このあいだのことをカミさんにばらす。
身に覚えがあるだろう。
長年の念願が叶った例の件だ」
「例の件?。まさか、おまえ・・・」
「おう。スナック・ハイテンションの美代ちゃんだ。
いいのかおまえ、カミさんに知られても?」
「そっ、それだけは待ってくれ。
頼む。武士の情けだ」
「俺のおかげで結ばれたようなものだろう。
おまえと美代ちゃんは。
なのに感謝の気持ちが足らねぇなぁ。俺にたいして?」
「しかたねぇなぁ。
同級生のよしみで今回だけは、特別に許可しょう。
きれいに使ってくれよ、3年間」
「おう。ありがてぇ。もつべきものは同級生だ。
交渉成立だ。
ということで今夜、呑みにいくか、美代ちゃんの処へ」
「持つべきはやっぱり同級生だな。
行こうぜ、行こう。
愛しの美代ちゃんに逢いによ・・・へっへっへ」
(9)へつづく
作品名:北へふたり旅 6話~10話 作家名:落合順平