北へふたり旅 6話~10話
北へふたり旅(8) 第一話 ベトナムがやってくる ⑧
「たった3年しか貸していない。
それなのに10年以上貸したかと思うほど、ひどい汚れだった」
「そんなにひどかったのか・・・中国の連中は」
「汚いなんてもんじゃねぇ。
連中がつくる料理は脂っぽい。おかげで、壁も床もぬるぬるだ。
換気扇は一年たたず脂まみれ。フィルターも2ヶ月持たない。
そのうえ台所やふろ場、洗面所や玄関も平気で汚す。
清潔を保て、みんなでつかう場所だから汚さないように気をつけろと
なんど言っても、連中に通じなかった」
「苦労したんだな。おめぇも」
「掃除だけじゃねぇ。騒音とゴミの分別でも苦労した」
「騒音?」
「金曜日になると、中国人が集まって来る。
さいしょのうちは小さな声で呑んでいる。
だが酒がすすむと大声になる。
あげくのはて、一晩中の大騒ぎに発展する」
「中国語はうるさいからな。ご近所さんも大変だ」
作品名:北へふたり旅 6話~10話 作家名:落合順平