北へふたり旅 6話~10話
北へふたり旅(7) 第一話 ベトナムがやってくる ⑦
その日の昼。騒ぎがさらにおおきくなる。
アパートの掃除に駆けつけた奥さんと妻が、家主に追い返された。
「なんじゃと!。
外人が住むとは聞いておらん。
そういうことなら話は別じゃ。ぜったいにアパートは貸さん!」
奥さんと妻が青くなる。
2日後にはベトナムがやってくる。
住むアパートがなくなれば、2人は路頭に迷うことになる。
「困るのはそちらの勝手じゃ。わしには関係ない。
Sに言ってくれ。契約は破棄だ。
わしは外人が大嫌いじゃ」
実習生制度は国の規定により、雇用主が住居を用意する
決まりになっている。
1室につき2名以内。一人当たりの寝室床は、3帖以上を確保すること。
しかし。今どき社員寮をもっている雇用者は少ない。
99%の雇用者がアパートを借りあげる。
ここへ実習生を住まわせる。
しかし多くの家主が外人と聞いた瞬間、拒否反応を起こす。
電話を受けたSさんが、あわてて現場へやってきた。
「おい、どうした。
いまごろになって契約破棄なんて、いったいどういうことだ?」
作品名:北へふたり旅 6話~10話 作家名:落合順平