北へふたり旅 1話~5話
北へふたり旅(4) 第一話 ベトナムがやってくる ④
「ベトナムの送り出し機関は、230社をこえる。
どうしてこんなに多いか、それは、とにかく儲かるからだ。
送り出し機関の費用はハノイは7000ドル(79万円)。
ホーチミンは5000ドル(56万円)が相場の平均。
ただし。
どこの送り出し機関に聞いても費用についてはベトナム政府が決めている
3600ドル(40万円)、と言っているけどね」
農協職員M君の饒舌は、とまらない。
かれは海外実習生制度ついて驚くほどよく知っている。
それには、じつは背景がある。
2017年3月23日。
群馬県はベトナムの社会事業省と、技能実習生の育成を行う覚書(MOU)
を締結した。
MOUは条約や契約書とは異なり、法的な拘束力をもたない。
しかしこれを契機に群馬県は、ベトナムの農業研修生受け入れに
本腰をいれる。
関係団体のひとつ農協へ、打診が来る。
これにこたえるかたちで、農機具課のM君に白羽の矢がたった。
作品名:北へふたり旅 1話~5話 作家名:落合順平