北へふたり旅 1話~5話
「なんだよ。管理団体としての仕事に、おおいに支障が
出ているじゃないか。
無理してそこまで受け入れなくてもいいだろう」
「人手が不足している時代だ。
どの企業でも人材が欲しい。
外人でもいいから、とにかく元気な働き手がほしい。
しかし。実習生が過剰になる原因は、それだけじゃない。
多ければ多いほど、管理団体にメリットがある。
とにかく儲かるからね」
「儲かる?。
管理団体というのは、非営利団体のはずだろう?」
「非営利団体であっても、利益を出すことに問題はない。
ただし。団体内で利益を配分してはいけないという規定がある。
儲けた金は、翌年の活動費としてつかう。
営利団体のように役員や出資者に、利益を配分することはできないからね」
「でも儲かるんだろう?」
「儲かるが、経費もかかる。
実習生1名を配分させるまでに管理団体は、40万の初期投資をする。
その見返りとして1ヶ月、4万円から5万円の管理費を雇用主から徴収する」
「なに。実習生のうわ前をはねているのか!。
それじゃ実態は海外研修生の、人材派遣業になるだろう」
「うわ前をはねているわけじゃない。人材派遣会社じゃないからね。
あくまでも非営利団体としての仲介だ。
経費としての管理費を、雇用主から毎月徴収しているだけだ。
3年間で1人当たり150万円から180万円の管理費が、管理団体へはいる」
「なるほど。たしかに管理団体は儲かる・・・」
「だが儲かるのは、日本側の管理団体だけじゃない。
送り出すベトナム側も儲かる。
すべての実習生に、ベトナム側の人材派遣会社が関与する。
3年間仕事すればベトナムで、15年から20年分に相当する金が稼げる。
その後の人生が大きく変わる。
だからほとんどの実習生が、100万円以上の借金を背負ってでも、
稼ぐために日本へやってくる」
(4)へつづく
作品名:北へふたり旅 1話~5話 作家名:落合順平