オヤジ達の白球 81話~最終話
「監督。何か言ってましたか?。坂上のやろう」
「安心しろ、熊。おまえさんの出番はなさそうだ。
あのやろう。リベンジの重さを今ごろになって、
ようやく実感したんだろう。
胸が苦しいそうだ」
「へっ?。一人前に胸が苦しい?。
前科一犯のくせに、みょうに感傷的だな、あのやろう・・・」
ふたたびプレィボールの声がかかる。
坂上が前傾姿勢をとる。
慎吾がサインを送る。坂上が、首を横に振る。
もういちど慎吾がサインを出す。サインが合わないのか坂上がまた、
首を横に振る。
3度目のサインをだす。
今度は坂上がサインにはこたえない。そのままプレートをはずす。
またピッチャサークルの中で棒立ちになっていく。
(あれれ、どうしたんだ、あの野郎。また別の病気でも発生したのかな?)
投球のために溜めていたエネルギーが、坂上の全身から消えていく。
顔がうつむいていく。
帽子のつばに顔が完全に隠れてしまう。
「ああ・・・また固まっちまったぜ。あのやろう。
わざわざ監督が激励に行ったというのに、あのやろうときたら、
なにひとつまったく
理解していないようだな」
熊が(まったくもって面倒なやろうだぜ)チッと、舌を鳴らす。
(84)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 81話~最終話 作家名:落合順平