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オヤジ達の白球 81話~最終話

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 「まったく聞いてないぞ慎吾から。
 坂上と投球練習をしていたという情報は。
 熊おまえ。もしかして、そのことを知っていたのか!」

 「監督。
 たしかに俺は、チームの中でいちばんの悪党顔をしている。
 疑われても仕方ねぇと思っているがみんなが思うほど、
 そこまで性格はわるくねぇ」

 「あら。変ですねぇ。
 熱心にピッチングのアドバイスをした人物がいると、
 慎吾君から聞きましたけど?」

 「人が悪いなぁアネゴも。
 たったいま、とぼけたばかりじゃねぇか。
 それなのにおれたちの秘密を、ぜんぶ監督にばらしちまって、
 どうするんだ」

 「おれたちの秘密?。
 さてはおまえたちは3人そろって、今夜のシナリオを準備してきたのか!」

 「しかたねぇだろう。監督。
 グランドでの失敗は、グランドの中でしか取り返さねぇ。
 俺は、敵前逃亡するような男は大嫌いだ。
 だがよ。いくら嫌いな人間でも、リベンジのチャンスまで奪うのは
 ルールに反する。
 もういちどだけマウンドへ立てる場面を作るから、しっかり
 練習しておけと、坂上に発破をかけた」

 「熊おまえ。みんなに言っていたことと、やってることが正反対だ。
 俺にもメンバーにも内緒で、慎吾とグルになり、坂上の復帰の
 準備をしてきたのか。
 あきれた話だ。まったくもって・・・」

 「誰かが助けてやらなきゃ坂上は、永遠に水面下へ沈んだままになる。
 このチームには借りがある。
 町のソフトボールから永久追放になりかけていた俺を、
 投手・ミスターXとして復活させてくれた借りがある。
 あれはほんとにありがたかった。
 今度は俺がみんなに、借りを返す番だ。
 だがよ。いまの俺には時間がねぇ。
 せいぜい、この程度のことしかできないけどな」

 と熊が、自分に言い聞かせるように最後の部分をつぶやく。


(82)へつづく