オヤジ達の白球 81話~最終話
「監督。守備はいつも通りでいきます。
それから。おまえらも見たとおり、エースの熊がこんな有様だ。
非常事態が発生した。だが救世主がやってきた。
いろいろ言いたいことはあるだろうが、いまさらつべこべ言うんじゃねぇ。
こんやの先発は坂上だ。
手を抜くな。いつものように勝ちに行く」
寅吉が全員に活を入れる。
「おう」とこたえて、メンバーが守備位置へ散っていく。
ミットを持った慎吾が「みんな待ってます。行きましょう坂上先輩」
と立ち上がる。
おう・・・と答えて坂上が、のそりとベンチから立ち上がる。
試合前の投球練習は5球。
低く構えた慎吾のミットをめがけて、坂上の練習ボールが飛んでいく。
小気味の良い音をたてて、ミットの中へ坂上の白球が消えていく。
「坂上君は土曜日のたび、慎吾君のハウスへ顔を出していたそうです。
もちろん、解体作業を手伝うためです」
となりへ座った陽子が、祐介へささやく。
「土曜日のたびに慎吾のハウスへ顔をだしていた?。坂上が?。
いったい、どういうことだ。
おれたちに会わないよう、土曜日にボランティアをしていたというのか」
「そういうことらしいです。
ついでですがボランティアのあと、投球練習もしていたそうです」
作品名:オヤジ達の白球 81話~最終話 作家名:落合順平