オヤジ達の白球 81話~最終話
「坂上。こいつらの甘い言葉を信じるんじゃねぇぞ。
かならず二遊間へ打たせろ。
おもえも知っているとおり、1塁手と3塁手は下手くそだ。
だが遊撃手の俺と、2塁手の寅吉は鉄壁だ。
まちがっても、1塁と3塁には打たせるな」
ポンと背中をたたき、内野手がそれぞれの位置へ散っていく。
坂上の顔が、うえをむきはじめた。
(お・・・やっと投げる気になったみたいですねぇ。坂上先輩が)
マウンドを見つめていた慎吾がうれしそうに、ミットを鳴らす。
「監督さん。
3度目のプレィボールをかけてもいいでしょうか?」
球審の千佳が祐介をふりかえる。
しかし。顔をあげはじめた坂上は、まだ目頭をこすっている。
「すまねぇ千佳ちゃん。
あとすこし。もう30秒だけ待ってくれないか。
それからいつものようにいい声で、プレーボールを宣言してくれ」
「わかりました。
でもこんなことは今回だけですよ監督さん。うふふ」
「すまねぇなぁ。
呑んべェどもが国際審判員の千佳ちゃんに、迷惑ばかりかけちまってよ。
恩に着る」
「どういたしまして。
そのかわり、こんど顔を出したら冷酒をおごってください。
素敵なチームに乾杯しましょ」
「素敵だって?、こんなどうしょうもない、呑んべェどもの
チームがかい?」
作品名:オヤジ達の白球 81話~最終話 作家名:落合順平