オヤジ達の白球 76話~80話
「なんでぇ。
気分よく呑んでいたというというのに、面白くねぇな。
つまらねぇ話を持ち出しやがって。
そういうことなら、せっかくのリベンジ試合だ。
坂上のやろうを探し出してきて、あいつに投げさせればいいだろう。
畜生め。頭にきた。
おれは、消防のリベンジ試合じゃ投げないからな。
面白くねぇ。帰るぜ、大将!」
テーブルの上に5000円札をドンと置き、北海の熊が立ち上がる。
「2度と坂上の名前を俺に聞かせるな!。
おれはな。なにがあろうと、責任を取らねぇ男は大嫌いだ。
そんな男の顏は、2度と見たくねぇ。
あいつに投げさせるというのなら、おれは、このチームから出ていく」
ガタンと派手な音をたてて、ガラス戸が閉まる。
(おっ・・・ようやく春が来たというのに、
いきなり窮地がやって来たぜ・・・)
のんべェたちの手が止まる。
全員の目が北海の熊が消えていったガラス戸に集まる。
しかし。いつまで待っても熊は戻ってこない。
それどころか、表で思い切りバケツを蹴飛ばした熊が、
足音をあらげてズンズンと遠ざかっていく。
(あらら・・・本気で腹を立てたようすねぇ、北海の熊さんは)
ピンクの割烹着の陽子が、熊が消えたガラス戸をじっと見つめる。
大雪の日からやがて1ヶ月。
男たちの記憶の中から、バレンタインの日の記憶がすこしづつ消えかかる頃、
思いがけない難題が、居酒屋のチーム内で勃発した。
いきなりのピンチだ。どうする・・・大将・・・
(80)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 76話~80話 作家名:落合順平