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百代目閻魔は女装する美少女?【第四章】

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「きゃあ、きゃあ、きゃあ、きゃあ・・・・。」
 由梨は目を瞑って、敵をまったく見てはいない。単に剣を振り回しているだけである。それでもジバクがやられていくのは、剣からオーラが出ていて、それに触れているためである。弱いジバクはこれだけで十分である。
 万步も同じように剣を持って、敵を倒し続けている。だがオレは何もできず、ボーっと佇んでいる。今のところはふたりで十分なようだ。三人だけで征伐に来たのもうなずける。
 そうして、かなりの数を倒した頃。
「うわああああ~。」
 オレが何もないところで転んだ模様。オレの倒れた先には由梨。傾いた時、手が何かに当たったのか?
「ちょ、ちょっと、都。戦闘中になに触ってるのよ。」
顔を赤くして、臀部を押さえる由梨。
「僕は何もしてないぞ。」
 オレは自分の両手を広げて無実をアピール。
「じゃ、じゃあ、いったい誰が。」
 由梨の後ろにいるのは他のジバクとは違う立派な身なりの武士。左右に金色の角が施された兜を装着している。月が雲に隠れて顔はよく見えないが、雰囲気が大将クラスらしき侍が由梨のオシリをなでなでしている。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ~。」
 由梨の絶叫が墓地の喧騒を超える。
「ちょっと、都、なんとかしなさいよ。」
由梨がオレに命令。でも何もできないオレ。万步も動かない。一方、ジバクのなでなでは止まらない。だんだんと攻撃領域を拡大しつつある。そのイヤラシ手つきは背中から前に向かう。いかに起伏が小さいとは女子の象徴である部分の危機。
 オレはトリガーカードを使おうとする。無論カードは由梨たちが持っているものであって、懐に入っていたりはしない。
「出でよ。カードの魔人」
 テキトーな呪文を唱えるが、何も起こらない。起こるはずもない。トリガーカードはそんなものじゃない。まさにクライシスが実現しようとしていたその時。
「もう見てられないぞ!」
大きな声が飛んだ。その発信源にはふたつの影。月がその姿を明らかにする。美緒と絵里華だ。
「美緒、こわかったよお。」
半泣きしながら抱きつく由梨。涙が収まるまでしがみついていた。いつの間に美緒と仲良くなったのか。
「助けてくれなんて言ってないわよ。助けに来るなんてビッグヘルプなんだけど。」
由梨は死ぬ間際の蝉のように美緒に張り付いたままの状態で強がりを言っている。
「そうか。ならば」
美緒は鏡を由梨に向ける。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ~。」
 再び絶叫する由梨。こんなシチュエーションだと、鏡で幽霊である自分にビビりまくってしまう由梨。
「もう意地悪しないでよ、美緒。」
「口のきき方が違わないか。相手は畏れ多くも神であるぞ。」
「そうでした。ごめんなさい。神様、許して、助けて~。」
 ついに自分のポリシーを折り曲げた由梨。依然として美緒にへばりついたまま。
「どうしてこんな悪戯をする。お前たちは静かにここで眠っていればいいものを。ここは丁度いい寝床ではないのか。」
 美緒が般若のお面をつけたままジバクたちに話かけている。面の額の部分が『怒(軽)』となっている。顔文字のようなものらしい。まだ完全に怒っているわけではなさそうだ。
「こんなところでじっとしておれない。ストレスが溜まるんだよ。現役時代天下目指して頑張っていたのに、今はこんなところで、小さく収まれっていうのが無理なんだよ。」
こう言いながら、姿を現したのが四人の武将。うちひとりは由梨をセクハラしていた人物。月の邪魔をしていた雲群が逃げると日食が終わるように光があたりを照らしてきた。侍たちの姿形が見えてきた。これがなんとも月明かりに映えるとびっきりのイケメン揃い。年齢で言うと20代前半、脂が乗ってきた若武者のイメージである。カードゲームに出てきそうなオーラを放っている。ちょっと待てよ。こいつら生徒会の『獅子天王』じゃなかったっけ?朝は普通ではないが、普通の生徒だったけど。よく思い出してみれば朝校門に立っている(正確には柱に座っていたが)時に、何か見えていたのは白い輪だったかも。しかし、今は学生服ではないので、微塵も高校生には見えない。
((スゴイどす、戦国武将コスどす!))
色めきたったのは絵里華の人形。なぜか本体もガッツポーズをしている。顔が無表情のままなので異様ではある。そう言えば武将系ってのは腐女子向けのゲームやアニメで数多く見られるものである。
「絵里華、みんな気をつけろ。こいつら、コスプレなんかじゃないぞ。」
近づいてきた四人の武将。いずれも威風堂々な甲冑姿。口髭が実に凛々しい。これなら『獅子天王』と名乗っていたのもうなずける。色めき立つ絵里華人形。
((写メを撮らせてほしいどす、ツーショットお願いどす、プリも撮りたいどす。))
 アニメ声で立て続けに3つのリクエスト。欲張りである。
「華やかだね。時代劇でのロケを思い出すよお。わくわく。」
万步はアイドル時代、色んなドラマに出ていた。もちろん主役とかではなかったが。撮影現場で、有名俳優の凛々しい姿などを見慣れている。でも霊界ではそれはご無沙汰であったので、久しぶりに現世の華やかな雰囲気を味わえると喜んでいる様子。
「ところで、美緒神、絵里華+人形。どうして、ここへ来たんだ。」
 実にもっともな疑問を呈した。美緒の呼び方を微妙に変えた。
「こら、都。いきなり話しかけるな。これを使え。」
 美緒は糸電話をオレに渡した。オレの部屋では平気のように見えたが、直接会話は禁止のようだ。
『う~ん。あの部屋に絵里華とふたりでいると退屈でなあ。』
 確かに人形使いとふたりではやることもなかろう。
『のんびりと夜の散歩にしゃれこんだわけだ。別にここに来ようと思ったわけではないが、ふらふらと歩いていたら学校に着いていたというわけだ。』
『でもその割にはすぐにここに来てるな。』
『ううう。』
 言葉に詰まる美緒。お面は『怒(中)』に変化した。
((美緒はんはみんなが心配なんどす。でもはっきりとは言えない気質なんどす。許してたもれ。))
 絵里華が妙な言葉使いで助け舟?
「こら、絵里華、余計なことをいうんじゃない。」
 美緒は怒ったような口ぶりであったが、額は『恥』となっていた。
『おいおい、そなたたち、何を身内で騒いでおる。呼んだのは日乃本都じゃったはずだが。まあいいわ。そんなことより、我らと遊んでいかぬか。』
 四人のうち、ひとりが前に出てきた。見る限り男である。顔と目が細長く、小さな鼻髭があり、いかにも神経質そうな感じである。美緒は間合いを取った。15メートル下がったのである。そして、糸電話。自分のカップにつながる糸から、4本の糸が分岐している。つまり、1対4である。
『貴様も武将ジバクのはしくれなら、まず名を名乗れ。』
 美緒の額は『男(凶)』と表示。
『なんだこれは?と言いたいところだが、糸電話だな。』
 戦国時代にこんなものはない。でもジバク。現代の知識も十分保有している。
『別に名乗るほどの者ではないが、そういうならお答えしよう。ワシは信長。そこにいる三人は秀吉、家康、光秀じゃ。』