百代目閻魔は女装する美少女?【第四章】
そういえば歴史の教科書に出ているあの有名人にソックリである。なお、彼らも額に、『信』『秀』『家』『光』と書いてある。これはわかりやすい。繰り返しの疑問であるが、生徒会ではないのか?
『まさか。そんな大物がジバクとは。確かにみんな死んでいるし、現世に悔いを残していてもおかしくはないな。戦国時代の英雄なんて、すべて満足して死んだなんてあり得ないしな。そもそも人間の欲望に限りはないし、その中でも飛びきりの連中だな。そちらが名乗った以上はこちらもそうすべきだが、ジバクにそんなことをする必要はない。でも偉人を前にしておまけしておこう。この神は神代美緒だ。』
『神代たちはいったい何しに来たのかな。というより我らを征伐しに来たんじゃないのかのう。』
信長は自分の頭を撫でながら糸電話に空気を送り込んでいる。
『そうだったな。じゃあ、すぐにここから消えてもらえるのか。』
美緒の額は『無』と表示されている。冷静である。
『まあ、それは条件次第じゃな。成仏させたいなら、こちらの要求を呑んでもらおう。我らはストレスでいっぱいなんじゃ。だからゲームでもして気持ちを明るくさせてくれたら言うことを聞いてもいいぞ。』
『よかろう。しかし、さきほどのようなセクハラはダメだぞ。』
『承知。あやつ、光秀はロリコンの気があってな、注意しなければならん武士ではある。おい、光秀、もうあんなことやってはならんぞ。』
『御意。御屋形様の仰せのままに。』
光秀はあらぬ方を向いて、返事をした。言葉とは裏腹に忠誠心は感じられない。これで大丈夫か。
『それではどんなゲームをやりたいのか、言ってみよ。』
『我らも武士のはしくれ。しろぜめじゃな。』
『城?そんなものはここにはないぞ。』
『しろといってもその城ではない。しろくろつけるという意味じゃ。』
『というと?』
『質問攻めのことじゃ。』
『つまり、この神たちに質問をしたいということかな。』
『そういうことになるな。それでよいか。』
『そんなことでよければ構わない。もっともこ神はバトルの方がやりたかったがな。』
『ではいいのだな。それでは始めるぞ。』
信長がそう言った途端に、墓場にクイズ会場ができあがっていた。パネルクイズ形式のようだ。左右に、ジバクチームと美緒たちチームに分かれている。パネルの中に、各選手が座っている。パネルには名前が書かれている。パネルといっても大きな墓石でできており、それをくりぬいて空洞を作っている。そこに入る仕組みである。草書体で、空洞の上の方に縦書きで『信長之墓』『秀吉之墓』『家康之墓』『光秀之墓』とある。向かい側に『美緒之墓』『絵里華之墓』『由梨之墓』『万步之墓』。都のはない。つまり、オレはなぜかゲームから外されてしまった。美緒たちは死んでいるが、オレはいちおう生きた人間なので墓はない。そのステータスの差か。しかし、元々呼ばれたのはオレなんだが。まあ、こんな勝負には出ないに限るが。
会場の真ん中に人影、いやジバク影が現われた。黒い眼帯をしている。隻眼のようだ。こいつも大層立派な兜、甲冑姿である。兜で顔はよく見えない。
「レディース&ジェントルマン。俺が司会者だ。文句あるか。」
いきなり登場したにもかかわらずケンカ腰である。でも回りに何も言わせないオーラがある。
「何の前触れもなく、出てきて不躾であろう。貴様何者だ。」
パネルに入って、男たちとの距離が許容範囲内となったので、美緒は糸電話会話を解除していた。
「俺は生徒会長政宗だ。以上。」
「なんとシンプルな。いちおう貴様が生徒会長か。他の四人が生徒会役員というわけだな。なるほど。眼帯をしているのはそういう理由か。わかった。」
美緒は何がわかったのか。
「では、クエスチョンタイム開始だ。エブリバディ、なんでも答えろよ。質問者は自分の名前くらい言えよ。」
政宗が司会者を務めるらしい。
『ぱぱぱぱぱぱっぱ~ん』どこからともなくファンファーレ。
「先鋒は信長じゃ。初恋は?相手は?」
うりざね型のやや長い顔。色白ではあるが頗る血色がよい。女に見紛うほどの美形戦士タイプである。額の『信』が眩しい。
美緒の回答。
「神に恋とはこれいかに。神話の時代に終わった。」
「「「「かっこいい~!」」」」
ジバク四人組が同時に拍手喝采。
絵里華の回答。
((中学1年の時にアキバに行って、フィギュアを見た時、絵里華の恋は始まったんどす。たくさんの恋人がいるどす。ウサミミナース、眼鏡っ娘ドクター、ミニスカートポリス、放課後女教師、パティシエ見習い、ドジっ娘キャビンアテンダント、小柄なバレーボール選手、泣き虫保育園先生、ハチマキ大工少女、萌える消防女子、タイトスカート公務員バイト女子高生、にこにこマック店員さん、モテモテパン屋さん・・・))
長いので、途中でオミット。
「「「「腐女子という者もいいのう。」」」」
由梨の回答。
「セレブのたしなみは社交デビューからよ。」
「「「「じゃあ、恋人いない歴16年?」」」」
「う、うるさいわねえ。ほっといてよ。」
万步の回答。
「幼稚園の時だよ。」
「うおおおおおお~。幼稚園児萌えるゥ~。」
光秀だけが盛り上がっていた。
「アイドルはそう答えるのがフツーなんだよ。なあ万步。」
美緒が問いかけた。
「そうかな。そうでもないかな。まっほわかんない。」
両手を口に当てて、アイドルポーズ。こういう時は大抵嘘をついていると思った方がよいだろう。
『ポロッ。』何か奇妙な音がした。しかし、誰も気づかなかった。
作品名:百代目閻魔は女装する美少女?【第四章】 作家名:木mori