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百代目閻魔は女装する美少女?【第四章】

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前に話した生徒会。『獅子天王』たちのいるところだ。普段オレとは無関係なので、詳しいことは知らないが、どうも評判が良くない。あまり近づきたくないメンバーである。
『2年D組の日乃本都ォ、放課後生徒会室に出頭するようにィ。』
 ガラの悪そうな男子の声で校内放送が教室に流れた。いったい何の呼び出しだ。
「都、なんか悪いことでもしたの?アタシには関係ないけど。」
 由梨が横を向いたままオレに話しかける。
「いや別に心当たりはない。いいことはしてないけど、悪いことはさらにしてない。それにしても『出頭』とはどういう意味だ?」
 ありていに語ったオレ。
『あっ、忘れておったァ。放課後と言ってもォ、夜8時に参るようにィ。』
 8時だと?これは穏やかではない。第一、帰宅部のオレにどうやって時間を潰せというのか?仕事のできないサラリーマンじゃあるまいし、8時は遅すぎる。
「そ、そう。別に好きにすればいいわ。アタシも忙しいけど、都が泣いて頼むから、仕方なくついていくわ。」
 泣いてなんかいないのは言うまでもない。
((これはいかにも、匂うどす。注意しないと。うちは一緒に行くどす。それが妻としての務めどす。ぽっ。でも由梨はんが行くなら、うちは行ってはならんどす。))
「だーれだ?」
 どこから湧いてきたのか、万步がオレの後ろにいた。なぜ判明したかというととある部分のボリュームがオレの後頭部を圧迫したからである。
「都たんのエッチ~!」
 万步はそう言いながらも笑顔。アイドルならこれぐらいのことはバラエティで経験済みだろうな。
 オレが何も言わないうちに、絵里華除きで3人タッグが成立していた。絵里華はババ抜きの一件が影響したのか同行せず。美緒は保健室フロアにいるのだろうか、そして授業に出てるのか、ちょっと不安。

 下校時間からかなり開いていたので、一旦家に帰って、再度登校するということになった。桃羅には『ちょっと外出』と書き置きをして出立。学校には部活をやっている生徒でもいたのか、まだ門は閉まっていなかった。生徒会室は4階にある。オレ、由梨、絵里華の三人で、現地に向かう。そういえば4階での授業はないから、行ったことなかったっけ。エレベータなぞないので、階段はしんどい。由梨をおんぶズマンしているからだということは口が裂けても言えない。
「何か言いたいことあるの?」
「べ、別に言いたいことなんてあるわけないぞ。どうしても聞きたいなら言わないでもないけど。」
「だ、誰の真似してるのよ。セレブにはぜ~ったい届かないんだからね。まあ100万年はかかるわね。」
「それはセレブになれるという意味に解釈できるぞ。不老不死の閻魔大王になればの話だが。」
「閻魔大王って不老不死なのかしら?」
「さあ、知らん。」
「まっほもセレブになったら不老不死になれるかな。死んでるけど。」
「万步は余計なことは言わないの。アタシを見てなさい。セレブがいかに偉大で、遠い存在かわかるわ。」
 下らない話をしているうちに、到着した。
『ROYAL SALON』とある。生徒会室なのか?
 ドアも結婚式場のように両開きで、取っ手にはダイヤモンドがちりばめられている。とにかく呼ばれている以上、入室は許可されているはずだ。思いっきりドアを開いた。そもそも暗い廊下から入ってきたわけではあるが、それ以上に中は暗かった。室内の様子は一見して異様だった。見渡す限りの墓地。雲が月を遮り、かなり暗い。地球の自転で、少しずつ明かるくなり、お互いの顔が十分確認できる程度の照度となった。ここって生徒会室じゃなかったっけ。
「あれっ。由梨。たくさんぶらさげたり、頭に付けたりしてるんだな。それっていったい何?」
 オレがツッコミたくなるのも無理はない。背中に乗った段階では何もからだにつけてなかったはずの由梨。首にあまたのお守り、十字架と藁人形にこけし、背中には破魔矢、両袖にはお札、額にはハチマキとろうそく。そこには『悪霊退散』とある。頭部側面にはツインテールを止めるリボンの代わりに、生にんにく。二個ずつで髪止している。
「こ、これはあれよ。あれっ。」
「あれって、もしかしたら、魔除けグッズなのかな。」
「ち、違うわよ。どうしてそんなものが必要なのよ。ここにあるのは、すべてアクセサリーよ、ファッションなのよ。そう、セレブはどこに行くにも身だしなみは豪華にしなきゃいけないことは昔から決まっているわ。」
「そうなのかな。動くのにジャマじゃないのか。」
「そ、そんなことないわ。十分機能的よ。ほら、この通りよ。」
 由梨がその場でターンをしてみせる。
「うっ、これはたまらん。」
 都は思わず鼻に手を当てる。にんにくの強烈な臭いがもやのように周囲を曇らせる。
 ここは墓地。この時間帯であればひっそりしており、都たちの会話だけが響くはずだが、そうではない。むしろ、回りの方がうるさい位に騒がしいのである。それも相当な数。食べたり、飲んだり、歌ったり、茶碗を叩いたり。能を舞ったり。中にはギターやドラムで演奏したりしている者もいる。
「由梨たん、都たん。あれを見て。」
 万步は平気でヒトらしき者を指差した。社会通念上は失礼な行為であるが、相手は人間ではなさそうなので、問題なし?
「・・・・。」
「あれって落武者?」
 由梨は血の気がひいて言葉を失っている。ぼろぼろの甲冑を着た者がたくさん見える。髷が解けて、残バラ髪になっている者も目立つ。手にしている刀も歯こぼれしている。敵がいるわけでもないのに、矢を次々と放ったりもしている。さらにそんな姿で、バンドをやっているのはどうみても異様である。世紀末というのはまさにこの状況を表現するのに適切な言葉である。
 オレたちは隠れて見ているわけではない。ということは向こうからもこちらが確認できるのである。
「おい、あれなんだあ?」
 傷だらけで、流血夥しい侍のひとりが腕を大きく伸ばした。その指は明らかにオレを指している。
「万步。あれって、ジバクだわね。」
「正解だよ。多分攻撃してくるよ。どうやって料理するかな。投げキッスでもやっちゃおうかな。ねえ由梨たん。」
 のんきな万步。
「・・・・。ガクガク、ブルブル。」
 由梨は薄い胸のところで、両腕を交差させて、からだを巻いている。典型的なこわがりポーズだ。
「薄いは余計よ!」
 少し元気がでてきたようだ。
 由梨が少し元気になったところに、ジバク侍たちがぞろぞろとやってきた。かなりの数である。そのうちのひとりが歯こぼれした全然切れそうになり刀を振り下ろしてくる。
「きゃあ!」
 由梨が悲鳴を上げた。瞬間、三枚に下ろした魚のように、きれいに切り裂かれた死体が転がった。由梨の手には、スプーン型の剣。由梨は自分の武器として、現世から持ち帰ったスプーンを使っている。実家のカレー屋さんで使っていたのであろうか。由梨たちは現世から霊界に来る際に、ひとつ思いでの品を持ってくることができる。それがオリジナルの兵器となっている。但し、持ち帰る代わりに何かを失ってきている。それは秘密である。なお、このスプーンは普段はユーホーキャッチャーとして目に付けている。
 由梨に次々とジバクが襲いかかるが、所詮ザコ。簡単に倒されていく。但し。