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奇っ怪山の未確認生物たち

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「奇っ怪山の『孝』、すなわちツチノコはイセエビから進化したのか、あるいはシャコから、もしくはナマコから進化したのか、はっきりさせることは実に簡単、――、要は捕まえて喰ってみれば、その味で判明するので~す、どうだ!」
 最後に無理矢理合意を求める「どうだ」が付いた説明をじっと聞いていた姫、ビールをゴクゴクと飲み干し、10秒間の沈黙。その後ゆっくりと語ります。
「イセエビ、シャコ、ナマコは高級食材よ、ところで貧乏暮らしの兄殿たち、これらを食したことは――、あるんかい?」

 ここで私たち三人の間に言い尽くせない長~い沈黙が。
 やっとこの状況を打ち破って、その割に小さな声で浩二が囁きました。
「ございません」
「ならば、ツチノコは何味かわからぬ。まっ、よろしかろう、其方(そち)たちが課題を解決しようとする心意気だけは認めて進ぜよう。よって、今度の日曜日に、現場確認で奇っ怪山に登り来て、たもれカレー」
 私たちはこの娑羅姫からの再三のたもれカレーに、ただただ一言「御意!」で、居酒屋での『孝』ちゃん話しに終止符を打たせていただきました。

 そしてしばらくの時が流れ、土曜日の夜半に浩二のオンボロ四駆車で出発。
 日曜日の朝には奇っ怪山の麓に到着し、そこからは平家の落人村を目指してエンジンをふかせました。
 何回か車ごと谷に転がり落ちそうになりながらも約2時間、鬱蒼とした木々に覆われた古いお屋敷の前へと辿り着きました。
 今にも壊れそうな門をくぐり、玄関先で浩二が「頼もう!」と叫んだのです。
 なにか道場破りのようで、勇ましかったのですが応答はさっぱりありません。仕方ないのでしばらく待ってますと、山から三人の供を連れて魔界平娑羅姉さんが戻ってきました。

「浩ちゃんに直ちゃん、こない鄙びたところによう来てくれはって、おおきに。さっ、中へ入って、今朝の猟で獲ってきた奇っ怪山名物、山トロぶぶ、さらさらとお食べやす」
 あの居酒屋での姫から目線でない語り口調、やっぱり都人の血筋なんでしょうね、当たりがやわらか~い。
 朝っぱらからハートマークがピューン、ピューンと飛びました。