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奇っ怪山の未確認生物たち

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 されども考えてみれば、その解決すべき課題はまだ聞いておりません。ここは浩二元会長の出番、「何をさせてもらったら宜しいのでしょうか?」と恐々(こわごわ)ながらも質問。
 すると妹君は奇妙奇天烈なことを、特に臆することなく、イカ刺しを可愛いお口にお運びになられながら仰ったのです。
「『孝』、つまりツチノコはどんな生物から進化を果たしたのでしょうか? 実のところ村人の間では3説あります。1つは伊勢エビ、2つめは蝦蛄(しゃこ)、3番は海鼠(なまこ)。振り返れば800年以上、実はこれら3説で、喧々囂々(けんけんごうごう)と論議されてきました。そう、時代は変遷し、今は令和、そろそろ決着を付けねばと皆の衆が思っております。そこで未確認生物に飛び切り興味を持たれてる両兄殿に、ここは縋(すが)り、ツチノコの祖先はイセエビか、シャコか、ナマコか、決着を付けていただきとうございます」

 かくして娑羅姫、いえ魔界平娑羅さんからこんな難題の解明の要望を突きつけられた私たち、まずは浩二が「ちょっとトイレ」と立ち上がりました。私も間髪入れずに、「ミーツー」と。
 だって話しの展開が奇想天外で、尿意を忘れていたわけでして、というより、この難問にちょっと間が必要でありました。
 こんな私たちに姫がしれっと宣われました。
「どうぞ、だけど両兄殿の連れションのあと、課題解決のための素案を聞きとうございますわ」

 このような追い込みに合い、私たちは狭い洗面所で、ブレインストーミング/特性要因図/なぜなぜを4回繰り返しなどの課題解決手法を駆使し、素案を見事見つけ出したのです。
 やったぜ、ベービー!
 私たちはこんな古臭い雄叫びを上げ、威風堂々と席に戻りました。
「ここは姫さまの命題解決の前祝いで、極上純米大吟醸で乾杯しましょ」
 こんなとんでもない注文をしようとする浩二、これに対し姫君は目の前の焼き鳥を串の根元から可愛い八重歯でゴイッとしごかれまして、あとは数回モグモグと。
 それからゆるりと、簡潔に述べられました。
「自腹で注文されよ」
 これに浩二は「大吟醸、なんちゃって、……、撤回」と干からびた枝豆を口に放り込みました。
 そんな動作に姫君はホホホと笑われ、あとは軽い調子で、「まずはご両人の素案をお聞かせ、たもれカレー」と。

 これを聞いた私、紗羅姫はただの浩二の知り合い。
 されども縁あって、今お話しをさせてもらってる。その上に、私たちに向かって、レトロちっくに、かつ、お笑い調に「お聞かせ、たもれカレー」と。
 うーん、たもれカレーって……。
 たもりカレーのことだよね。浩二も私も一気にたもりカレーのファンになりそうでした。
 されどもです、この誘惑を浩二は力強く撥ね除け、ツチノコの祖先は何なのかはっきりさせる方法を自信たっぷりに語ったのですよね。