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奇っ怪山の未確認生物たち

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 怒りからいきなりの柔和笑み、私はこのギャップに胸キューン。
 これは今話題のギャップ愛だとハッと気付き、もちろん即座に「御意」。
 それから振り返り、「ツチノコの転がりを全部録画してたんだろ、何かヒントがあるかも知れないので、一緒に観てみないか」と浩二に声を掛けました。
 多分ヤツも同じ思いだったのでしょうね、「任せなさ~い」と同意してくれました。

 それからです、私たちはコンコロコンから始まり、近場ではゴンゴロゴンと転がり来るツチノコの映像を目を懲らして再確認。
 この必死にパッチの結果、最終的に『孝』ちゃんは飛び込み台先端に新月面4回宙返り極細1点着地、その決めポーズは――。
 尻尾を逆反りさせ、長い口先を水平にした垂直立ち。
 浩二と私はこの決めポーズを再々確認し、その立ち姿に「オッオー、これって」と声を上げ、何回も目をこすりました。
 それから深~い呼吸を一つして、雄叫びを上げたのです。
「タツノオトシゴだ!」

 かくして課題の結論に至りました。
 早速私たちは謹んで紗羅姫にご報告申し上げました。
「奇っ怪山の『孝』、つまりツチノコは海底の隆起により出来た太古池、そこに閉じ込められたタツノオトシゴが陸に上がり、想像を超えるエボリューションを。詰まるところ山暮らしにうまく適応し、今の姿へと、いわばほぼ高等生物へと進化したのです。だけど刻まれたDNAにより、中秋の名月の夜、大潮の揺らぎシグナリを感じ取り、一夜だけの故郷(ふるさと)帰りをするのですよ」と。

 こんな若干理屈っぽい解釈を微笑みながら耳を傾けられていた紗羅姫、まずは頬にかかる髪をさらりと梳(と)かされ、「ツチノコの祖先は、イセエビ、シャコ、ナマコにあらず。平家が落人としてここに住むようになってからの論戦、やっと終止符が打たれることになるのね、真実はイケメン・タツノオトシゴで」と。
 その後珍しく真面目な表情となられ、「各々方、ご苦労だった、心より感謝申すぞ」と礼を言ってくれはりました。
 私たちは姫の難問解決の一助になったことが嬉しくって、野郎同士ゴツゴツした手と手を取り合っての小躍りです。
 そんなヤッター感一杯の時に、紗羅姫がボソボソと呟きました。
「タツノオトシゴは池から山へと、だったら『あいつ』はこの『反対バージョン』だということね」

 えっ、『あいつ』って???
 反対バージョン???
 私たちは姫が口走られたこれらの言葉の意味が飲み込めず、脳内は「何のこっちゃ?」の嵐となりました。
 それがやっと収まり、「ねっ、あいつについて、もう少し分かり易くお願いします」と迫りました。
 すると紗羅姫は悪びれる風もなく、「あらっ、話してなかった、ゴメン。中秋の名月の夜、つまり今夜ね、池の底から山頂に向かって『あいつ』が飛び出して来るのよ。これも故郷帰りね」と。
 それから真顔となり、「そろそろ村に帰りましょ、喰われるかも」と仰るではないか。