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奇っ怪山の未確認生物たち

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 こんな美技を見せつけられた娑羅姫も浩二も、もちろん私も思わずパチパチパチ、要はビッグハンドでした。
 この太古池の静寂を破る三人の万雷の拍手に、ヤツは私たち人間どもへと振り返り、ニッと笑いやがりました。
 それから一拍おき、今度はその場で垂直に何回も飛び跳ねます。
 もちろんそれと同時に飛び込み台は上下に振動し始めました。
 オットットット、今度は飛び込み競技か? 
 私たち三人は予想外の展開に、もう拍手どころではありません。ただただ拳を握りしめ、ただただ上手くやれよと口を開けてるだけでした。
 そしてツチノコは私たちの期待に応えるように、網の向こうへと飛び上がり、そこからですよ、前宙返り5回転抱え型を。
 その技をさらりとやってのけて、まさに水面にスポッ!
 すなわち水しぶきはなし、ですよ。

 私たちは心底感動しました。
 だって、『孝』ちゃんは人類が未だ、いや決して出来ない技を簡単にやってのけたのです。
 三人類の震えが止まりません。
 そして少し収まった時に娑羅姫が物申されたのです。
「今回の目的は、『孝』の祖先はイセエビかシャコかナマコか、その論争に決着を付けるため両兄さまに解いて欲しいと頼みました。だけど、あんたたちの方法は捕まえて食べればその味でわかるって事でしたよね。イセエビもシャコもナマコもお値段高すぎ晋作で、食べたことがないくせに。もっと言わせてもらうわ、あんなに素晴らしいパフォーマンスが出来るツチノコへと進化した『孝』君を炭火焼きにして味わう、そんなこと出来るっ――、ちゅうの? このクソバーカ!」
 浩二も私も、もう返す言葉がありません。ただただモジモジと。
 それでも姫は「そのためのお前さんらの最終捕獲作戦は、網に飛び込んでくるのを待って、キャッチ? これではっきりしたわ、とっくに進化が止まってるご両人では、『孝』の祖先解明、不可能ってことね」と止まりません。

 こんな言いたい放題に合って、もう浩二は、せっかくツチノコに出会えたのに、ショボ。
 しかしですよ、私は違いました。
 こんなにボロンチョンに言われることって、勤め人にとってはよくあることですよね。
 とどのつまり、慣れてます。
 だってパワハラの最終追い込み言葉、「あそこに枝振りの良い松がある、そこで首吊ってこい」とまでは言われてないのですから。
 私はむしろ怒る紗羅姫さまが可愛く見えてきて、「ご指導ありがとうございます、されども『孝』の祖先解明のため今しばらくの御猶予を」と訴えました。
 すると姫は意外に「直樹君、さすが貧乏サラリーマン、割にしぶといのね、いいわ、1時間あげるから結論出して、チョンマゲ」と微笑むじゃありませんか。