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奇っ怪山の未確認生物たち

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 私は恐怖で鳥肌が立ち、オシッコちびりそう。
 そこで先っぽをキュッと摘まみ、「あの遠吠えのヤツは?」とマドモワゼル・娑羅に身震いしながら尋ねました。
 これにうら若き乙女は面白そうにフフフと笑い、「あれはね、人面山イルカの――、まさに月に吠えるよ、直樹君、恐いの? まだガキッチョね」と。
 その後は八重歯丸出しでの、ハハハと高笑い。
 こっちの方が恐いよ思ってる内に、それは収まり、仰ったのです。
「これこそが『孝』の転がり開始の合図なのよ、さっ、両兄殿、網を持たれよ!」
 この力強い下知に、浩二も私も背筋が――、シャキッ!

 その緊張が消滅しない内に私たちは、先端の直径1mの網から伸びてくる長さ10mの柄、その手元をしっかり握りしめました。
「直樹、いよいよだぜ、さっ、飛び込み台の先で待ち受けし、ヤツが空中へとジャンプし、池に着水するところを、キャッ、キャッ、キャッチするぞ」
 興奮で、浩二の言葉がビシッと決まりません。
 私は浩二の気持ちがわかります。我が友は学生時代からツチノコをずっと追い掛けてきました。
 しかし、いつも空振り。
 その悔しさからか、今は範疇を広げ、未確認生物なら何でもいらっしゃーい状態に。
 それがここへ来て念願のツチノコに会える、いやそれ以上に、運が良ければ捕獲できるかも知れない。

 いえいえ浩二のことだ、居酒屋での提案、『孝』の祖先はイセエビかシャコかナマコかを解明するため、未だ食すことを諦めていないだろう。
 しかし一方、あの時娑羅姫は、いずれも高級食材、味わったことのないあなた達には『孝』が何味か識別できないでしょ、と一蹴されました。
 私はあの時のやりとりを突然思い出し、思わずプププと吹き出しました。
 それでも一途な友にシンパシーを感じ、「未確認生物発見同好会の元部長、互いに頑張りましょう」と声を掛けました。
 これに浩二の応答は一言。
「時成りぬれば、今はとて」

 えっ、えっ、えっ、何じゃ、それ?
 この古風な言い回しは、この場面において合ってるのか?
 私は小首を傾げてると、横から娑羅姫が「あら、ちょっこし風流ね」なんて言うものですから、私は余計にこんがらがって……、頭ボー。
 そこへ姫から声が上がりました、「シュツ、ジ~ン!」と。
 かくして、若干不明瞭なところが残ったままでしたが、ツチノコ捕獲作戦が始まったのです。