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奇っ怪山の未確認生物たち

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 孝の坂は巾5mほど。奇っ怪山の頂上から鬱蒼として森を一直線に下(くだ)りきて、その最終地点は太古池となっています。
 ゴツゴツした岩は見当たらず、背丈30cmほどの雑草が坂の上から下まで覆う。
 なるほどこれならツチノコが転がり下りてきても、傷を負わない。
 だが水際近くとなると、高さ1mを超えるブッシュが伸びたい放題。これでは池への飛び込みは難しいでしょう。
 そこで浩二と私はまずその辺り一面の草を刈りました。そして山から切り出してきた枝木を組み合わせ、長さ7mほどの板状の台を作成しました。
 それをヨッコラセと池へ向かって張り出させ、つまりにわか飛び込み台を設置したのです。

 以上のような据え付け、簡単に述べさせてもらいましたが、まさに、言うは易(やす)く行うは難(かたし)でした。
 すなわち重労働、我がチーム内順列の2番手と3番手は3時間滝のような汗を流しました。
 一方、1番手の娑羅姫はどうだったかと言いますと、肉体労働は苦手と言い放ってたのですが、突然海女さん姿に変身。
 その後は素早く山に閉じ込められた太古の海にダイビング。その成果として、少し小粒でしたが縄文アワビと縄文サザエを――、大漁!
 きっと私たちの労働以上にきつかったでしょう、なのにね。
 その上にですよ、姫さまはこれらに串を通し、手際よく醤油焼き。あとは召し上がれとふるまってくれはりました。
 山の稜線上にぽっかり浮かんだ淡紅色の大きな満月。その柔らかい月光に包まれながら――、美味と美姫。まさに至福の時でした。
 ホント、浩二の単に知り合いの女性は『 OMOTENASHI 』を愛する姫でした。その心持ちに惚れ惚れしました。

 そんな思いを抱いてから小一時間ほど経ったでしょうか、月は中天へと。
 月面の黄色はフェードし、ゆっくりと青白い光を放つようになってきました。
 その変容のせいか、奇っ怪山の頂上から太古池への一帯は神秘なベールに包まれてしまったような感が否めません。
 そんな折りのことです、遠くの高い岩場から「ワーイ、オーイ、ヤッター」と奇妙な鳴き声が聞こえてきました。
 一体あれは……、何?
 反射的にその方向へと視線を向けますと、月光の中にシルエットが。
 それはおどろおどろしい野獣のような?