星に願いを
飴玉
目の前に置かれた、袋入りの「ソレ」
錠剤というより
赤い飴玉のような「ソレ」に彼女は目を細める
「美味しそう」
彼女の言葉に彼は小さく微笑み
彼女のいう「飴玉」を差し出す
「お一つどうぞ」
「飴玉」を手にした今
全てが終わると理解した今
彼女と向かい合い、微笑む彼の事を思う
彼は最初から最後まで
短い間だったけど自分にとって唯一、存在する人だった
彼女が無視しない人
彼女を無視しない人
どうか彼だけでも身体等なくても
どうか彼だけでも心だけで生きていけたらいいのに、と思う
思うが、無理な話
それなら自分の身体を差し出したい
それなら彼の理由は解決する
だけど
こんな自分でいいのか
こんな自分の人生でいいのか、とも思う
思うが到底、無理な話
彼は彼女にはなれなし、彼女も彼にはなれない
「ありがとう」
「飴玉」を受け取った彼女は震える声で言う
彼を信じて、彼女は一緒に死ぬんじゃない
彼女を信じて、彼は一緒に死んでくれるんだ
何故か、そう思えてならない
だからお礼を言わせて欲しいと、彼女は思った
「一緒に死んでくれて、ありがとう」
そうして俯く彼女から
彼は感謝の言葉を受け取る
返す言葉もなく頷く彼は心の中で叫ぶ
違う
一緒に生きるんだ
これは結末
彼が望む形
彼女が望む形
他の誰かが望む形の、結果