星に願いを
提案
彼の提案は服毒
自殺の七割が縊首、次いで飛び降りに比べれば稀だが
彼曰く、時間は要するが入手する伝があるという
「まあ」
「本物かどうかは疑問だけど」
彼女は同意した
彼から、保留の提案を受け入れたあの日から
勝手だが彼女は「自分の覚悟」とやらを彼に委ねた
そして勝手だが「自分の覚悟」を彼は受け入れた、と思いたい
だから異存はない
彼女は彼を信じて一緒に死ぬ事に決めた
以降、彼と彼女は以前と変わらず
教室で会っても挨拶以外、言葉も目線も交わさず
交わしたメッセージIDで連絡を取り合い
偶に放課後、自分達しか訪れない屋上で会うだけだった
それでも彼と彼女の距離は近づく
「君の事、好きになりそう」
突然の、彼の告白にも動じず彼女は少しだけ唇を歪める
彼の前ではもう、彼女は無表情ではない
「あたしが女で、残念?」
冗談ぽく言うが冗談ではない
彼は自殺の理由を詳しく話してくれた
「そうだね」
言った後
彼は自嘲するように笑い、首を振る
「君はそのままでいい」
「僕は自分が男なのが残念なだけ」
捨てる事も、傷付ける事も出来ない
「じゃあ、あたしは君がいい」
彼女の何気ない一言
瞬間、彼の笑みが固まり
黒目勝ちな目が小刻みに揺れながら彼女を見つめる
そうして大きく頷いた
「そうだね、君が僕で」
「そして、僕が君だったら最高だね」