星に願いを
仮の姿
足を止め振り返る上総が
眼光鋭く彼を見据える
「死神、か」
確信はない
人間ではない
悪魔ではない確信はある
「乱射乱撃雨霰、いや違う」
「感謝感激雨霰」
向かい合う彼が、にっこり笑う
「あ?」
噛み付く勢いで聞き返す上総に
彼は舌を鳴らし、右手の人差し指を左右に振る
「そーやってすーぐきばをむくー」
(そうやってすぐ牙を剥く)
射抜くような上総の視線を受けて
顔を逸らす彼は手の平を向けて「落ち着け」と宥める
「てかーなれないしよーできおくがとんでただけだしー」
(てか、慣れない仕様で記憶が飛んでただけだし)
「でももーかんぺきだしー」
(でももう完璧だし)
「ぜーんぶおもいだしたしー」
(全部思い出したし)
俄ギャル語で誤魔化すも
能面のような顔で見つめる上総を前に
彼はばつが悪いのか、蟀谷を掻く
「ああうん」
「体験すれば理解してもらえる、かな」
「お薦めしないけど」
と、付け足す彼は能面面のまま
奥歯を噛み鳴らす超絶不機嫌な上総に微笑む
「仕方ないじゃん」
「生きとし生けるものの魂は、神様のもの」
「君達、悪魔に渡す訳にはいかない」
彼の声とも
彼女の声とも
少年のような
少女のような声が響く
「機嫌直して」
「特別に見逃してあげるよ」
言うなり彼は「シッシ」
と、両手で追い払う仕草をする
悪魔は死神に勝てない
絶対ではない
それでも
死神に喧嘩を売る悪魔等いない
「新米だと舐めてるのか?」
眼を剥き牙を剥く
低く、不気味に唸る上総の様子に
彼は呆れながら否定する
「単細胞だな」
と、思いつつ彼は両手を上げて言う
「お互い、仮の姿」
「傷付くのは御免蒙るって事」