星に願いを
そして彼女(彼)の場合
明らかに機嫌を損ねた
当然だ、彼女は慌てて弁解する
「どうしても死なせたくなかった」
思えば思う程
知れば知る程
「惹かれたんだ」
「彼女の姿に」
「彼女の心に」
そんな彼女の熱を帯びる言葉に
上総は冷眼で受け流す
「それがお前の言い草か?」
彼女は首を振り
曖昧な笑みを浮かべる
「ごめんなさい」
悪魔風情が
あろう事か契約ではなく賭けをした
挙句、賭けに負けて得るモノは何一つない
「死んで、地獄行きは嫌だったんだ」
上総は気色ばむ
幾度となく繰り返される言葉
一体、何処の誰が
悪魔と契約しその死後、地獄行きと教えたのだろう
「お前等人間は」
「或る意味、俺達を知らない」
「地獄だ、天国だ」
「それは神や死神の管轄に過ぎない」
心底、申し訳なさそうな顔を見せる
彼女を一瞥する
長居は無用だ
屋上の鍵等、動作ない
見送ってやったんだから今度はお前が見送れ
と、言わんばかりに上総は背中を向ける
「もう一度、会えたら」
声を上げる彼女を
間髪入れず上総が遮る
「消滅と引き換えにお前を八つ裂きにする」
巫山戯ろ
二度もただ働きする気はない
そう考えて
二度目も踊らされる設定なのか
と、思わず口元を歪める
「会いに来てくれたのは貴方だけ」
初めから悪魔に願った訳じゃない
最後の最後に願ったんだ
待ち合わせをした訳じゃない
ここは星に願った場所
ここは貴方に会った場所
背中を向けたまま
上総の唇から乾いた笑いが漏れる
だからといって
「懐かれても困る」