星に願いを
家族計画
彼の言葉に
彼女は言葉にならない声を上げた
膝をつき
泣き崩れる彼女を彼は抱き寄せる
癖のある枯茶色の髪の毛を撫でながら
真っ直ぐな黒髪に憧れていたが
コレも悪くないと思い直す
「早速、二人に挨拶に行こう」
突然
頭上に降ってきた理解不能な彼の言葉に
彼女は泣きながらも反応する
「え?」
ふたり?
あいさつ?
挙句
彼はすっくと立ち上がり
当惑する彼女に構う事なく
立て板に水の如く、喋り始める
「大丈夫」
「気に入られる自信あるしって当たり前か」
「親だし」
「母さんには馴染みの洋菓子」
「父さんは…、囲碁の相手でイチコロだ」
うんうん、頷く彼
とうさん?
かあさん?
てか
あたしプロポーズされたの?
てか
あたしがプロポーズしちゃったの?
屋上を
縦横無尽に速足で歩き
喋り続ける彼の後を彼女は拙くも追いかける
「学生結婚も有りだけど、先ずは婚約?」
「え、いや」
「嫌なの?!」
突然
自分の言葉に対応する彼に吃驚して
彼女は咄嗟に首を振る
「だよね?」
にっこり笑う彼
「僕はカワイイし、君はカッコイイ」
皆まで言わない
察してくれと言わんばかりに大袈裟に頷く
三枚目を演じる
丸でコントのように振る舞う彼の姿に
彼女は置き去り感が半端ない
「式は?」
「洋風?、和風?」
待って待って
「そうだよね」
「本来の、花嫁である君の意見も大事だし」
「でもでも着るのは僕だし」
彼ってこんな人だったの?
顔面偏差値高めで
穏やかな性格の彼の意外な一面?なの?
尚も一人
ウェディングドリームに花を咲かせる
彼の背中を見つめる
「ね、ねえ?」
意を決し声を掛けた彼女に
振り向いた彼が飛び抜けた笑顔で言う
「子どもは」
「君そっくりの女の子が一人」
彼は自分の胸元を指差す
以前の彼は朗らかに笑う
彼女になった彼は飛切りの笑顔で笑う
その笑顔を眺める
いつの間にか
彼の笑顔に釣られて笑っていた
彼女は小さく首を振る
「二人がいい」
そうして
ゆっくりゆっくりと彼女は彼になった
自分の身体を抱き締める
彼を愛せる
彼女を愛せる
「あたしそっくりの女の子と君そっくりの男の子」
「子どもは二人がいい」
言った後、目をまん丸くした彼の視線に気付き
とんでもない事を口走ったかも?
と、火照り始める頬を慌てて手で押さえる
そんな彼女に
彼は右手の親指を立てて同意する
「一姫二太郎って事で!」